健康宣言とは?メリットや申請方法を解説
皆さんは「健康宣言」という言葉を聞いたことがありますか?近年、健康に対する意識が高まる中で、自己の健康状態を公に表明し、自主的な健康維持・向上活動を促進するための一つの手段として注目を集めています。
健康宣言とは一体何なのでしょうか?どのようなメリットがあるのか、そしてどのように申請するのか、詳しい内容を知りたい方も多いのではないでしょうか?
この記事では、そんな「健康宣言」について詳しく解説していきます。
健康宣言とは
健康宣言は、企業の経営者が従業員やその家族の健康管理を経営上の重要事項として捉え、それに対する戦略的な取り組みを組織内外に向けて表明する行為です。
健康経営優良法人への申請においては、中小規模法人部門および大規模法人部門の両方で、健康宣言を社内外に発信することが求められる重要な認定要件となっています。
特に、中小規模法人部門においては、後述の健康宣言事業への積極的な参加が申請において不可欠な要素となります。
健康宣言事業とは
健康宣言事業とは、各保険者―各地の協会けんぽや健康保険組合―が推進する、一連の健康マネージメントプログラムのことです。これは、保険加入者である従業員が自分自身の健康について考え、健康増進の行動を促進することを目的としています。
具体的な活動としては、健康に関する情報の啓発、食生活や運動の習慣を見直し、早期に病気を発見し予防するための健康診断などの利用を推奨しています。
このような活動を通じて、全ての保険加入者が「自分で自分の健康を管理する」意識を持つことが期待されています。さらに、地域全体が健康増進に協力することで、健康寿命を延ばすとともに、地域社会全体の福祉と医療環境が改善されると考えられています。
目指す結果は、各自が自身の健康を維持し、共に健康な生活を送る社会の実現です。健康宣言事業は、その実現に必要な一助となる取り組みです。
この事業の名称は各保険者によって異なり、東京の協会けんぽでは「健康企業宣言」、愛知では「健康宣言」、そして大阪では「健康経営」として知られています。
健康宣言事業で重視される取り組みとは
健康宣言事業で重視される取り組みについて確認していきましょう。
健康診断の促進
多種多様な病気の早期発見と未然防止が求められる現代社会において、健康診断はこれらの目的を達成するための理想的な方法と言えます。
健康宣言事業では、健康診断の活用促進の取り組みに焦点を当てています。
健康診断は指導機能と予防機能を兼ね備えたものであり、早期発見により、病気の進行を防ぐことが可能になり、治療成功の可能性を高めてくれます。また、期間を定めて健康診断を受けることで、自分自身の健康状態を目の当たりにすることで、自己管理の意識を高めることができます。
しかし、健康診断を受けるためには、時間、費用、そして受けること自体への抵抗感など、さまざまな問題が存在します。
そのため、健康宣言事業では、健康診断の重要性を理解し、参加意欲を高める方法を提案したり、診断の機会を提供するなどの活動を行っています。
健康宣言事業の目指すところは、健康診断の促進により、自分自身の健康に気づき、より良い健康状態を維持することを人々に理解してもらうことです。
健康診断の再検査と保健指導の活用
再検査の実施や保健指導の活用に力を入れています。
再検査とは、初回の健康診断で異常が見つかった際に具体的に行う検査です。初回の健康診断は基礎的な健康チェックで、再検査によってより深い診断を行います。
こうした再検査では、病気の早期発見・早期治療が可能となり、病気から来る身体や生活への影響を最少限にすることが期待できます。
また、保健指導は、健康診断結果から導き出された健康に関する課題に対し、専門的な指導やアドバイスを行うものです。
生活習慣の改良や適切な運動・飲食習慣のアドバイスを含め、具体的な行動案を示します。
こういった保健指導を通じ、参加者自身の自己管理能力が向上し、病気予防や生活習慣改良の向上が見込まれます。
健康宣言事業を通じたこれらの取り組みは、健全な生活の維持に必要な具体的な行動を促進し、参加者全員の健康状態の向上を目指しています。
再検査の勧奨や、保健指導の推進は、地域全体の健康への志向や個々の健康への自覚を促進する重要なツールなのです。
健康増進に適した職場環境づくり
健康的な職場環境の構築に取り組むということは、まず始めに、各社員が自らの健康を重視する姿勢をもつことから始まります。
ここで重要なのが、定期的に行う健康診断や、健康についての教育プログラムの提供などです。
そして、労働時間の削減などといった働く環境の改善も、策定するべき施策の一部となります。
加えて、健康への配慮と評価を求めて、カフェテリアメニューの再評価をしたり、フィットネス設備を設けたり、ウォーキングイベントを企画したりすることも欠かせません。
職場が健康を重んじる環境であれば、社員は体調管理がし易くなりますし、仕事への満足感やモチベーションも引き上げることができます。
これは、企業全体の生産能力を高める結果につながります。健康宣言事業は、社員と企業がともに利益を得る「win-win」の取り組みと言うことができます。
禁煙・受動喫煙対策の取り組み
健康宣言事業はどこにでも適用可能な健康促進の一環であり、その具体的な方法や活動が企業や地域社会で開始されています。
特に取り組みが重点的に置かれているのが禁煙や受動喫煙対策です。これにより、健康の維持・向上が目指されています。
特に大規模な企業や地域では、全体を巻き込んだ禁煙・受動喫煙対策の主導が要求されており、これは職場や公共の場所での全面禁煙、分煙の推進、禁煙支援プログラムの利用促進といった形で具現化されています。
ただし、これらの取り組みが有効に機能するためには周知活動が欠かせません。
喫煙の健康へのネガティブな影響や受動喫煙の危険性について広く理解を深め、禁煙を志す環境を整備することが必要です。
これは禁煙者の増加だけでなく、社会全体の健康意識の向上にも寄与します。
健康宣言事業は今後も個々の健康への意識を高めるための重要な道具であると捉えられ、各地でのより一層の活性化と取り組み導入が期待されています。
メンタルヘルスの取り組み
日本の健康宣言事業では、体調管理だけでなく、心の健康にも焦点を当てています。その理由は、メンタルヘルスが生活のクオリティ向上だけでなく、職場での能力や生産性にも影響を与えるからです。
具体的には、ストレスの適切な管理と軽減、うつ病や不安障害といった精神的な問題の予防と対応、そして心の健康維持に必要な知識と技術の提供が含まれます。
ストレスは病気の一つの原因と認識されており、適度なストレスは働き手に刺激を与え、生産性を向上させますが、長期的な不適切なストレスは健康を害します。そのため、適切なストレス管理が重要となります。
さらに、精神的な問題は見過ごされがちですが、早期発見と予防は非常に重要です。適切な知識と理解を持つことで、精神的な問題への理解と対策が進み、問題解決の一歩目となります。
これらの取り組みは個人の健康意識を高め、結果として企業全体の生産性を向上させます。したがって、健康宣言事業におけるメンタルヘルスの取り組みは、個人の質の高い生活と企業の成長の双方を支える重要な要素となっています。
具体的な取り組みとして、ハラスメントなどの問題への相談体制や窓口の整備、産業医等の外部の相談窓口の設置、そしてストレスチェックの実施とその後の面談などが行われています。これらはあくまで例であり、詳細な取り組み内容は加入している保険者や公的機関に問い合わせることが可能です。
健康宣言事業と健康経営優良法人の関係とは
「健康宣言事業」は、企業が働き手の健康を大切にし、疾病予防や早期発見、健康向上への努力を社会に声高に表明する活動です。これは、働き方の改革の一部と見なされ、個々の健康管理が生産性の向上に寄与すると認識されています。
一方で、「健康経営優良法人」は、働き手の健康を経営上の課題としてとらえ、それを達成するために経営陣自身が主導する法人を評価・認定する制度です。「健康経営優良法人認定」を得るためには、健康宣言をすると共に、具体的なアクションプランを策定し、その実行・評価を行うなど一定の要件が必要です。
「健康宣言事業」と「健康経営優良法人」は密接な関係性をもっており、これは企業の健康経営に対する意識改革と成果向上を推進する強力なツールとなります。これらによって、健康で仕事がしやすい環境の整備と共に、企業の競争力を強化することを目指しましょう。
「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」の申請の際には、「健康宣言事業」に参加することが必須です。この申込書を提出することから、「健康経営優良法人認定」へ向けた具体的な活動が始まります。協会けんぽの支部によっては、「健康宣言事業」に申し込んだだけではなく、健康経営の活動後に協会けんぽ支部からの認定を受けることが必要です。
例えば協会けんぽの東京支部では、「健康宣言事業(東京支部では「健康企業宣言」)」への申し込み後、6ヶ月以上の活動を経てから実施結果を報告し、「健康優良企業 銀」の認定証を受けなければ「健康経営優良法人」の申請が許可されないシステムになっています。
健康宣言事業は各協会けんぽの支部によって異なるため、健康宣言に申し込む前後や、健康経営優良法人への申請可能なタイミングなどは、協会けんぽの担当者に確認しておきましょう。
健康宣言事業参加のメリットとは
健康宣言事業参加のメリットを詳しく見ていきましょう。
健康経営優良法人(中小規模法人部門)への申請が可能
厚生労働省が推進する「健康宣言事業」に参加することは、健康経営を実施する企業から見て大きなメリットとなります。
中でも、その最も顕著なメリットは「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」に申請ができるようになることです。
健康経営優良法人の認定は、企業の信用力を高め、求職者への魅力を向上させるなど、新たなビジネスチャンスを生む可能性があります。優良健康経営法人として認められることは、ブランディングや取引先との信頼関係強化に役立ちます。
その他に、従業員の健康と安全に対する組織全体の取り組みは、従業員の信頼感や満足感を引き上げ、結果として企業の長期的な業績向上に寄与します。
健康宣言事業への参加は企業にとって大きなステップアップのチャンスです。健康経営推進による長期的な組織の成功と成長の観点から、是非検討してみてください。
健康経営優良法人の申請が可能になることは、健康宣言事業に参加する最大のメリットだと言えるでしょう。
健康経営推進のサポートを受けられる
メリットの一つに、健康経営推進の専門的な力により支援される点が挙げられます。
多様なバックアップ体制が整っており、企業の問題の解決や従業員の健康増進方針の設計に寄与します。具体的な例を見てみると、従業員全員の健康状態に基づいた健康計画を策定する支えや、健康関連の研修や学習会の開催などを通じて、あなたの企業特有の健康経営を推し進めるために必要不可欠なサポートを受けることが可能です。
健康宣言事業に参加する企業は、その事実を広報活動に取り入れるために活用することができます。これにより、独自のブランド力を強化し、取引先や顧客、求職希望者からの信用を得ることが見込めます。その他にも、従業員のモチベーションの向上や退職率の低減、生産性の向上につながることも大きな利点と言えるでしょう。
宣言事業への参画は健康経営を助ける力強い手段となるでしょう。従業員の健康研究のパートナーになるだけでなく、企業成長への一助となる価値ある事業と位置付けられます。この支援の内容は各保険者により異なります。詳細を知りたい方は、自身が加入している保険者までお問い合わせください。協会けんぽや健康保険組合の担当者が情報提供・アドバイスしてくれるため、より健康経営を推進しやすくなるでしょう。
健康宣言事業への申請方法とは
健康宣言事業への申請方法などの詳細は各保険者によって異なります。ここでは大まかな流れについてご紹介します。正確な申請方法は加入している保険者(各地の協会けんぽ・健康保険組合)にお問い合わせください。
加入している保険者に相談
「健康宣言事業」は、生活習慣病の予防に沿った制度であり、申請者には給付金の支給もあります。その参加手続きとは、納税者自身、もしくは特定の被保険者が保険者へ直接行います。初めに、限定的な健康診断が行われ、その結果を元に詳しく説明を受けます。その上で、自己判断により申し込みます。
申請の手順としては、各保険者が指定する書類をダウンロードし、それに必要な情報を記入し、メールや郵送で送付します。申請時には過去一年の健康診断結果を提出することが一般的ですので、これを用意しましょう。
申請後は、保険者からの回答を待つことになり、認められた場合は、健康管理プログラムがスタートします。この制度の活用は、生活習慣病の予防と早期発見、早期治療につながります。
万が一、申請の手続きに迷ったら、地域により手続きが違う場合もありますので、まずは保険加入者に尋ねてみましょう。
保険者へ書類提出
健康宣言事業は、保健者が提案する生活習慣の改善や生活習慣病の予防策等を一緒に取り組む事業です。各保険者がオリジナルの事業を展開し、その申込方法も様々ですが、基本的な手順をここでご紹介します。
開始にあたっては、まず保険者のウェブサイトや窓口にて健康宣言事業の内容を把握します。多くの場合、参加資格として健康状況や生活習慣に関する調査が行われます。
次に、エントリーシートや登録票、健康宣言書等と呼ばれる申請書類に必要事項を記入し、保険者に提出します。申請書は、基本的に保険者のウェブサイトでダウンロード可能で、FAXやオンライン等で提出ができます。
申請書を提出する際、保険者との連絡先(電話番号やメールアドレス)を忘れずに記載し、自身の健康情報を完全かつ率直に記入することが求められます。
最後に、保険者からの連絡を待ちます。初回は自己診断の結果と改善プランの提示が行われ、その後は定期的に健康状態の報告を行う形となります。
健康経営の取り組みを開始
健康宣言の内容を決定し、それに従った実行プランを組み立てます。その後、必要な文書を準備し、健康宣言事業の公式ウェブサイトから申請します。申請に必要な文書には健康宣言の内容、経営トップの健康経営への取り組み内容などが含まれます。
申請を行うと、その内容が評価され、適合すれば公式に認定されます。この認定を獲得することで、企業の信用力向上や社員の健康意識向上など、共通のメリットを享受することが可能になります。
健康経営実施結果のレポート・評価シートを提出
健康宣言事業への申し込みでは、過去一年間の健康経営成果を明確に表したレポートと数値化した評価シートの提出が求められます。レポート内では、健康経営の具体的取り組みや効果、経済への影響など詳細な内容が求められます。
評価シートでは、数値情報を用いて健康経営の成果や効果を明確に表現します。これらの評価の結果が良好であれば、企業が積極的に健康経営を推進し、それによって労働者の健康が改善し、業績も向上していることが証明されます。
これらの書類を揃えたうえで、健康経営評価機関へ申し込みを行います。審査が通れば健康経営宣言が認定され、企業の健康経営への取り組みが公正に評価されます。
例えば、協会けんぽ東京支部では、「健康企業宣言」への申し込み後に6ヶ月以上の取り組みが実施された後に初めて実施結果レポートを提出可能となります。
また、「健康優良企業 銀」の認定証を取得しなければ、健康経営優良法人(中小規模法人部門)への申し込みができません。さらに健康宣言事業の参加タイミングによっては、「健康優良企業 銀」の認定証の取得が次年度に遅れる可能性もあるため、計画には十分な注意が必要です。
まとめ
健康宣言は自己の健康維持意識を高めるもので、透明性を持つことで周囲との健康的な競争や励ましを得られるメリットがあります。
健康目標を公にすることで、自己責任感を強化しつつ、周囲からのサポートや応援を受けられるようになります。
申請方法は各地方公共団体や企業等により異なりますが、あらかじめ定められた健康目標に取り組むことを表明し、その達成プロセスを報告することが基本的なステップとなります。
よくある質問
健康宣言とはどういう意味ですか?
健康企業宣言とは、健康優良企業「銀の認定」「金の認定」を目指して、企業全体で健康づくりに取り組むこと(健康経営)を宣言することです。
すでに健康経営に取り組まれていても、そうでなくても、宣言をしていただくことが可能です。 ※健康企業宣言は、全国健康保険協会の登録商標です。
健康宣言するにはどうすればいいですか?
健康宣言を行うための手順は以下の通りです。
加入している保険者に相談する: 健康宣言事業への参加に興味がある場合、まずは企業が加入している健康保険者や関連機関に相談しましょう。保険者は事業者に対して、健康宣言事業への参加手続きや必要な書類について提供できます。
エントリーシートの提出: 企業は、健康宣言事業への参加を希望する場合、エントリーシートに必要な情報や計画を記入して保険者に提出します。このエントリーシートには、健康経営の方針や実施予定の取り組み、従業員への健康促進活動などが含まれます。
健康経営の取り組み開始: 保険者がエントリーシートを審査し、承認された場合、企業は健康経営の取り組みを開始します。これには従業員への健康診断や健康促進プログラムの導入、労働環境の改善などが含まれます。
健康宣言事業への参加は、企業が従業員の健康促進に本格的に取り組む姿勢を示す重要な一環です。保険者や関連機関からのサポートを受けながら、計画的かつ継続的な取り組みを進めることが求められます。
健康経営宣言のメリットは?
健康経営宣言を行うことには以下のようなメリットがあります。
従業員の健康意識向上: 健康経営宣言は、企業が従業員の健康を重要視している姿勢を示すものです。この宣言により、従業員は自身の健康に対する意識が高まり、健康に配慮した行動や生活習慣の改善が期待できます。
労働環境の向上: 健康経営に取り組むことで、企業は労働環境の改善に注力します。これにより、働きやすい環境が整い、従業員の働きやすさやモチベーション向上が期待できます。
従業員の健康促進: 宣言に基づき、企業は様々な健康促進プログラムやイベントを導入することがあります。従業員が主体的に参加し、健康を向上させる手段としてこれらの取り組みが役立ちます。
組織全体の活性化: 健康経営宣言は組織全体の活性化を促進します。従業員が健康に対する共通の目標を持つことで、協力体制が生まれ、仕事への取り組みが向上します。
健康経営への認知向上: 宣言を通じて、企業は外部に対して健康経営への取り組みをアピールできます。これにより、企業イメージの向上や人材採用の有利性が生まれる可能性があります。
インセンティブの受給: 一部の地域では、健康経営宣言を行うことに対して税制上の優遇や助成金の受給などのインセンティブが提供されることがあります。これにより、企業は経済的なメリットを享受できます。