1. HOME
  2. 会計・ファイナンス
  3. 環境会計とは?定義や導入事例について解説
会計・ファイナンス

環境会計とは?定義や導入事例について解説

環境問題が深刻化する現代社会において、企業が自社の環境負荷を把握し、可能な限り低減させる取り組みは、社会的責任として必須となってきています。そんな中、注目を集めているのが「環境会計」です。しかし、具体的には何を指すのでしょうか?また、なぜこれが必要なのでしょうか?

ここでは、環境会計の定義と、実際にそれを導入して成果を上げている企業の事例について紐解いていきます。これからのビジネス環境をリードするための重要な視点である環境会計について理解を深めていきましょう。

環境会計とは

環境会計とは、事業活動における環境保全へ投じた費用や削減効果などを具体的な数値として会計処理することを指します。

環境会計の定義とは

環境会計とは企業が取り組んでいる「環境保全活動に関する費用と効果」を数値化(定量化)することで、その環境保全の取組みを評価する会計手法のことです。

たとえば、企業が実施した「CO2(二酸化炭素)の削減」についての環境会計だと、「どれくらいのコストがかかったのか」「どれくらい削減できたか」を金額やkgで表します。

環境省が定めている「環境会計ガイドライン」では、「環境保全コスト」「環境保全効果」「環境保全対策に伴う経済効果」の3つを、盛り込むべき情報として定義しています。利害関係者に対して事業活動 により 得 ら れ た 効果を認識し可能な限り定量的 貨幣 単位 又は 物量 単位 に 測定 し 伝達する必要があります。

環境会計の基本となる重要な事項や、集計結果に対する説明なども記載事項です。

このようにさまざまな環境への取り組みやコスト、経済効果を数値で表すため、保全活動に関する費用対効果を正確に評価できます。株主や一般消費者などのステークホルダーにとっても、「企業がどれくらい環境への配慮を行っているのか」がひと目で判断可能になります。

環境会計で計算する数値は、経営に直接かかわる利益や費用ではありません。自然や周辺地域への投資や支出についての会計を行うのが特徴です。

環境会計と似た会計に「自然資本会計」があります。こちらは自然環境を「企業の経営を支える資本」として捉え、企業活動への影響や依存度を把握して評価するツールです。自然資本会計は企業が使用した自然環境をすべて金額に換算して評価をするという点が異なります。

環境会計の内部機能とは

環境会計の「内部機能」は、主に企業内部で発生する環境コストを把握・管理し、また適切な投資判断を可能にするための情報を提供します。さらに、組織内における環境リスクの評価や環境保全活動の経済的な評価を行うことができます。

環境会計の内部機能は、環境保全のコスト管理やコストの効果分析を通じて、効率的かつ効果的な環境保全への取り組みを可能にします。その結果、具体的な経営判断が可能となり、経営者や関連部門はこれを経営管理ツールとして利用することができます。これは、企業内部の影響を与え、組織全体の改善につながります。

環境会計の外部機能とは

「環境会計の外部機能」とは、企業が事業活動における環境保全の成果を一般公開し、それが外部の各関係者の意志決定に影響を与えるという概念を指しています。

具体的には、「外部機能」では以下のような企業と関わりを持つ方々に対して情報開示が行われます。

– 消費者

– 取引先

– 投資家

– 地域の住民

– 行政

– 非政府組織(NGO)

情報開示の内容は、企業の環境会計の情報はもちろん、環境保護に対する企業の姿勢や、具体的な環境保全への活動結果などです。このような情報を外部に公開することで、企業は外部の関係者に対する説明責任を果たします。さらに、「この企業はビジネス活動だけでなく環境配慮もしている」という認識を外部の人々に与えることで、企業の行動が適切に評価される可能性も生まれます。

環境会計の結果は、会社が環境報告書を作成した後、公式ウェブサイトや印刷物で一般に公開されます(公開しない企業も一部存在します)。

環境会計が必要とされる理由とは

持続可能な社会の実現に向けては、大量生産・大量消費・大量廃棄のサイクルを見直し、環境保全への配慮をした経営戦略の構築が求められます。このような企業活動は消費者による適切な評価を必要とします。

しかしながら、従来の財務会計では企業の環境保全への努力を数値化し、その状況を評価することが難しいという課題がありました。そこで登場したのが環境会計であり、これは企業が行う環境保全活動を正確に測定し理解するための枠組みを提供します。

環境会計は、企業の環境負荷を明確にし、それにより具体的な削減目標の設定や達成の可視化が可能になる一方、経費削減にも繋がるため、経営効率向上にも寄与します。

日本では1999年3月に「環境保全コストの把握及び好評に関するガイドライン」が公表され、翌2000年に正式なガイドラインが発表されました。その後も改定を重ね、企業の実情に合わせた最新のガイドラインとして2005年版が提供されています。

環境会計を導入するメリットとは

環境会計の取り組みは、企業が持続可能な社会構築にどう貢献するかを理解するための重要な一歩となります。これは経済活動から生じる環境負荷を数値化し、ビジネス判断に活用する方法ですが、その利点は大きく3つに分けられます。

一つめは、環境コストを明確化し、製品やサービスの開発、生産過程の改善ポイントを把握できることです。特定の製品の生産過程から出るCO2排出量を計算し、それを削減することが環境負荷の軽減につながります。これは結果として長期的なコスト削減にもなります。

二つめに、社会との繋がりを明確にすることが挙げられます。環境に優しい製品やサービスは、消費者の評価を高め、企業の社会的信頼性とブランド力を強化します。また、現在注目が集まるESG投資においても、低環境負荷は価値あるポイントとなります。

最後に、環境法規制への対応能力を強化することです。環境会計導入により、法規制の変化に素早く対応し、リスクを最小限に抑えることが可能となります。

環境会計ガイドラインとは

環境会計は、環境省作成の「環境会計ガイドライン」に基づいています。

環境会計ガイドラインの概要

「環境会計ガイドライン」は、企業が地球環境に及ぼす影響を明確に把握し、その影響を重視した経営決定を行うための基準作りをサポートします。これは、企業が自社の活動から生じる環境への影響を評価し、その結果を考慮に入れた意思決定を行うフレームワークを提供します。

このガイドラインでは、企業活動から生じる環境コストを、「環境保護対策費」「環境負荷軽減対策費」「環境負荷発生対策費」の3つの項目に分け、各項目が何を示すのかを詳しく定義しています。

さらに、環境会計ガイドラインは、企業が社会的責任(CSR)を考慮した資源配分や環境対策の方向性を決める際の参考資料となる存在でもあります。これにより企業は自社の環境配慮行動をより明示する事ができ、ステークホルダーの評価や信用を高める助けとなります。

環境会計の導入事例とは

環境会計の導入事例を具体的にご紹介します。

森永製菓

日本を代表する菓子メーカー、森永製菓は、社会課題の解決や持続可能な社会の実現に向けて、食を介した取り組みを行っています。その中でも、環境に配慮したビジネス運営の方法として、環境会計の導入が注目を集めています。

森永製菓では、現在、全社を通して環境会計システムを採用しており、すべてのビジネス活動における環境負荷や取り組みを具体的な数値で把握しています。商品や製造プロセスのCO2排出量やエネルギー消費量を計測し、それを削減すべく、持続可能な施策を進行しています。

成果を公開することにより、自社の環境に対する意識と誠意を、取引先や消費者に対して明確に示しています。森永製菓は、製品全体のライフサイクルを通じて環境負荷を低減し、持続可能なビジネスモデルへとシフトしています。これらは、ビジネスの発展と環境保護の両方を両立させる好例となっています。

トヨタ自動車

日本最大の自動車メーカー、トヨタ自動車が、経済活動と環境に対する影響を可視化し、負荷の軽減を図るツールとして、「環境会計」を用いている実例について検討します。環境会計は企業の環境保全の活動と業績を連携させる方法の一つで、バランスの良いビジネス運営を目指します。

トヨタはエネルギー、水、その他の資源の消費量を積極的に監視し、その経費を計算し、また新製品や生産プロセスの改善など、環境負荷削減に対する投資の効果を評価しています。

また、「トヨタ地球環境憲章」を掲げ、また「トヨタ環境チャレンジ2050」を策定し、複数の環境目標を達成するための戦略を確立しました。具体的な目標には、新車のCO2排出量の削減、水の使用量の最小化、そして適切な廃棄物処理やリサイクルシステムの導入といったものがあります。

まとめ

環境会計は、企業の環境負荷と経済活動を計測・評価し、持続可能な経営に役立てる手法です。多くの企業が環境負荷低減とコスト削減の両立を実現し、社会責任を果たす一方で競争力向上にもつなげています。この環境会計の導入は、企業の進むべき方向を示す重要な羅針盤となり得ます。

よくある質問

環境会計を公表するメリットは?

企業が環境会計を公表する利点は、環境報告書などでこれを明示することで、社会とのコミュニケーションを強化できることです。この公表により、企業は環境に配慮した姿勢を示し、他社との差別化を図ることが可能であり、それが営業戦略にプラスの影響を及ぼすこともあります。