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リスクマネジメントとは?リスクの種類や手順について分かりやすく解説

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現代の経営環境は、様々なリスクに晒されています。それは自然災害から始まり、経済的な変動、テクノロジーの進歩、競合による脅威、法令遵守など、数多くの不確実性が組織に影響を与える可能性があります。

これら全てに対応することは不可能ですが、予想外のリスクに備えて対策を立て、それらを効果的に管理することは企業が生き残るための必須項目です。そのために重要となるのが「リスクマネジメント」という概念です。

リスクマネジメントと一口に言っても、その内容は非常に幅広く、具体的な手法や手順も多岐に渡ります。そこで本記事では、リスクマネジメントの基本的な概念、リスクの種類、そしてリスクマネジメントの手順について、分かりやすく解説していきます。

リスクマネジメントとは

リスクマネジメントとは、企業や組織が直面するリスクを全面的に把握・分析・評価し、それに対する防御策と対処策を策定する一連の作業を指します。

これには戦略的なリスク、財務的なリスク、業務遂行におけるリスクなど、多角的な視点から考えるべきリスクが含まれます。その目的はリスクをただ避けるだけでなく、どの程度まで受け入れるべきか、どのようにしてリスクを減らすか、またはリスクを他に移すかという決定を下すことです。

企業にとってリスクは必然的に存在しますが、リスクマネジメントを適切に実施することで、リスクをビジネスの機会へと転換させることが可能になります。

ISO31000というリスクマネジメントの国際規格が2009年に発行され、その後2018年に更新されました。さらに、2020年には、リーガルリスクマネジメントの国際規格ISO31022も発行されています。

現代社会は、ますます複雑さと不確実性を増していますが、そのような状況下でも、リスクマネジメントの役割はより重要となっています。

リスクの種類とは

リスクは、純粋リスクと投機的リスクの2つに大別されます。

純粋リスク

純粋リスクは企業に損害や損失をもたらすリスクです。企業にマイナスの影響をもたらすこの種のリスクを抑制するため、リスクマネジメントの中核的な活動は、事態や損害を最小限に抑えることに焦点を当てています。

代表的な純粋リスクには、火災や水害、地震、自動車事故、テロなどがあります。

投機的リスク

投機的リスクは、一般的には金融投資や経済活動に関するリスクを意味します。これには、資産価格の揺れや経済情勢の変動により、投資が赤字に陥る可能性が含まれます。具体的には、株の価格下落、金利変動、通貨レートの揺らぎ、事業の多角化などがこれに当てはまります。

投資という利益を追求する行為が裏目に出ると、最悪の場合には資産がゼロになることもありえます。しかし、このリスクをある程度抑制し、利得を得られる一方で、過度な投機行為は大きな損失をもたらす危険性も忘れてはなりません。だからこそ、投機的リスクをしっかりと理解し、適切なリスクマネジメントを行うことが求められます。

リスクマネジメントのプロセスとは

リスクマネジメントのプロセスについて詳しく解説します。

リスクの特定

リスクマネジメントのスタートは、リスクの特定から始まります。この段階では、予測されるあらゆるリスクを列挙します。些細なものでも見逃さずに、可能な限りリスクを特定していきます。

思わぬ小さなリスクが、企業に大きな損害をもたらすこともあるため、十分な洗い出しを行いましょう。企業内でできる限り多くのリスクを特定するためには、ブレーンストーミングやシナリオの作成、想定される事態のプロセスを考慮することが有効です。

また、専門家がまとめた調査結果も参考になります。例えば、監査法人トーマツの「企業のリスクマネジメントおよびクライシスマネジメント 実態調査 2018年版」では、上場企業が国内で注目しているリスクをランキング化しています。

具体的なリスクの中には、地震や災害、人材不足、法令順守違反、情報漏えい、サイバー攻撃、労務問題、価格競争、原材料の高騰などが含まれます。自社で特定したリスクと合わせて、こうした調査結果を照らし合わせることで、見逃している重要なリスクがないかをチェックすることができます。

分析

リスクの分析においては、リスクがもたらす影響を詳細に検討する必要があります。特定されたリスクが実際にどの程度の損失や影響をもたらす可能性があるのかを明確に把握するため、過去の事例や他社の事件・事故を参考にすることが有益です。

具体的な数値化が可能な場合、被害総額や人数、対応に要したコストなどを数値化し、リスクの影響度や発生頻度を可視化します。これにより、各リスクの重要度を客観的に評価し、優先順位をつけることが可能となります。

ただし、数値化が難しい場合は、リスクの影響度を重大さのレベルで分類し、発生頻度をいくつかの段階に分けるなど、定性的な評価を行うことも重要です。このような定性的なアプローチを通じて、リスクの重要度や影響を適切に評価し、リスク対応の優先順位を明確にすることが必要です。

評価

 

リスクマネジメントの評価において、リスクの影響度と発生頻度を基にした評価指標を活用します。この評価指標をリスクマトリックスやリスクマップと呼ばれる図表に整理し、可視化することが一般的です。

この図表では、縦軸にリスクの発生率、横軸にリスクの影響度を示します。このように配置することで、発生頻度が高く、かつ影響度が大きいリスクが一目で把握できるようになります。これらの要素が高いリスクが、最も優先度の高いリスクとなります。ただし、影響度が低くても発生頻度の高いリスクには注意が必要です。それらを軽視するのではなく、適切な対策を講じることが重要です。

この図表を通じて、リスクの重要度や優先順位を客観的に判断し、リスク対策の優先順位を検討します。発生頻度と影響度のバランスを考慮しながら、優先すべきリスクに対する適切な対策を検討することが求められます。

リスクへの対応方法の検討

リスクに対する具体的な対策が重要となるステップです。このステップでは、リスク対策には「リスクコントロール」と「リスクファイナンシング」の2つの方法が考えられます。リスクコントロールとは、リスクの回避や軽減という方式です。回避策はリスクを全く避ける戦略、軽減策はリスクの影響を最小化する戦略を指します。一方、リスクファイナンシングとは、リスクの転嫁や自己負担を考慮に入れた戦略で、転嫁策はリスクを第三者へ移す手段、自己負担策は自己が直接リスクを管理する手段となります。

これらの対策を単独で実行するのではなく、リスク管理計画を立案し、適切に実施するためには複数の戦略を組み合わせることが多いてす。その選択は、リスクの性質や組織の特性、目的、環境等により大きな影響を受けています。

認定審査におけるリスクマネジメントと対策とは

2020年3月からのホワイト企業の認定審査では、リスクマネジメントが設問内容に追加されました。業種によって異なるリスク内容がありますが、以下の5つの項目は、全ての企業に適用される重要事項です。

情報セキュリティ

認定審査の進行においてリスク管理や対策は、情報セキュリティを保つ上で不可欠な要素です。審査自体は多くのリスクを伴いますが、それらを適切に制御し対処することで、全行程を安全且つ効果的に進めることができます。

審査上のリスクには多くの形があり、その中には文書への不正アクセス、情報体制の不備や、適切な運営や整理の失敗等が含まれます。これらのリスクは、個人情報を漏洩させたり、審査結果の誤解を招く可能性があります。

これらのリスクを対策するためには、審査プロセス全体を明瞭にすることから始めます。文書のアクセス制限を定め、情報管理が適切に行われるように進める際の注意点を明示します。さらに、適切な操作と処理が行われるよう、教育や監視も行います。

労働安全衛生

企業が遵守すべき法律として、労働安全衛生法があります。これは「職場で働く人々の安全や健康を確保し、良好な労働環境を作る」ための法です。企業は、指導者を任命し、その役割、責任、権限を明らかにし、彼らに必要な教育を提供する责務があります。

この法に基づく安全・衛生の方針を定め、その目標設定、労働時間のコントロール、教育計画の実施、結果の評価と改善などが含まれます。そして、この一連の流れを常に調査対象とするのが認定審査のリスクマネジメントです。これは、人的トラブルや設備予備の実現原因となるリスクを事前に理解し、それを最低限にするための具体的な労働計画を構築することを目的としています。

具体的には、比較的影響の大きな危険性から順に問題を評価し、対策を講じます。これには、問題が発生する可能性、影響の程度、対策の優先度などが考慮されます。さらに、労働者が自分自身の安全を保護する意識を持つことが求められています。これを実現するためには、定期的な安全教育や健康管理が不可欠です。

災害対応計画

認定審査のリスクマネジメントは、思わぬ問題やトラブルへの適切な対応や解決策を模索する重要な手続きです。これには審査運用やシステム、通信環境などで発生した予測不可能な障害に対するリスク制御策も含まれます。

さらに、リスクマネジメント案には災害対策も盛り込まれます。日本で頻繁に発生する地震、洪水、台風などの自然災害、さらには全国的な感染症の流行など、大規模な災害に対する対策も密に行わなければなりません。

対策の具体例としては、複数の審査地を確保し、遠隔地でのバックアップシステムを作り上げることにより、一定の審査活動を保ちつつ、万一の状況への対応力も身に据えることが考えられます。さらに定常的な訓練や再現訓練の施行を通じて、状況に応じた迅速な対策をとる体制を作ることも大事です。

重要機密情報のバックアップ

認定審査における機密情報の取り扱いは、企業が持つ重要な責務の一つです。ウイルス感染による情報の喪失、不適切なアクセスによる情報漏えい、システム停止による作業遅延、あるいは災害によるハードウェアの損傷など、難易度の高いリスクを伴います。

これらのリスクは、企業の信頼性を傷つけ、審査を行う認定機能そのものへ影響を与える可能性があります。

多様なリスクに対処するためには、機密情報を適切にバックアップすることが欠かせません。データを複数の場所に保存することで、情報漏えいや情報ロスによる影響を最小限に抑えることができます。

また、データを安全かつ容易に利用できる環境を整備することも重要です。信頼性の高いクラウドサービスを用いることで、安全性と便利さを両立させることができます。

さらに、審査に関わる全員が情報管理についての専門的な教育を受けることで、情報の取り扱い方を理解し、リスクについての認識を共有することが求められます。

BCP(事業継続計画)の更新

BCP(事業継続計画)は災害や事故等により事業が中断した状況でも、主要な業務をキープし、事業の継続性を担保するための戦略です。

認定審査のリスクをもBCPの一環として捉えることで、より具体的な対策や対応策の立案が可能となり、BCPの更新に繋がります。このような手法を採用することで、認定審査のリスクが機会へと転換し、企業全体の品質向上と成長を促します。

BCPは、平常時に対策を定め、そこで決定した手段により、自然災害や火災等の緊急時に遭遇しました際、企業活動の損害を最小限に留め、事業の早期回復を達成するための根本的な戦略です。

2011年の東日本大震災などの大災害は、直接的な被害に留まらず、供給連鎖にも大きな影響を及ぼしました。この経験から、「防災」と「緊急時の事業継続」の重要性が再評価され、2012年に「中小企業BCP策定運用指針」が改訂されました。

まとめ

リスクマネジメントは、企業が直面する可能性のあるリスクを予測し、効果的に対策を講じるための手法です。リスクは、自然災害、経済変動、テクノロジーの進歩、競争、法令遵守などさまざまです。

本記事では、リスクマネジメントの概念とその手順、さらには主要なリスクのタイプを具体的な事例を交えて解説しました。皆様があらゆるリスクに対抗し、自社を確保・強化するお手伝いができれば幸いです。

よくある質問

リスクとは何ですか?

「リスク」という言葉は、一般的には「危険」と連想されますが、ビジネスの文脈ではむしろ「危険=失敗」という意味よりも、予測不可能性や不確実性、変動性を指すことが一般的です。 したがって、リスクの大きさとは、リターンの変動が大きいことを示し、リスクの少なさは、リターンの変動が小さいことを意味します。

リスクマネジメントの種類は?

リスクマネジメントにおける対応策は、個々のリスクに対する「低減」「回避」「移転(共有)」「受容」の4つのタイプから、それぞれ最適なアプローチを選択し実行するプロセスを指します。

リスク対処にはどんな種類がありますか?

リスクに対する一般的な4つの対応方法は、リスクアセスメントの結果をもとに決定されます。これらの対応策は、リスク回避、リスク軽減(リスク低減)、リスク移転(リスク共有)、リスク保有の4つのカテゴリに分類されます。

リスク受容とは?

リスク受容とは、セキュリティ対策によるリスク低減を行った結果、最終的に残るわずかなリスクを受け入れることを指します。たとえば、リスクが発生した場合に対処するために掛かる費用が、低減策の実行にかかる費用よりも高い場合など、リスクを受け入れる選択肢が採用されることがあります。

リスク軽減策とは何ですか?

リスク軽減策とは、リスクの発生可能性を減少させるか、もしくはリスクが発生した場合の影響を緩和するための対策です。具体的な例として、「地震による工場の倒壊により事業が数ヶ月間停止するリスク」に対する軽減策としては、耐震補強などが挙げられます。

リスクの種類は?

リスクは大きく二つのタイプに分けられます。

純粋リスク:損失のみをもたらすリスクです。地震、火災、水害、交通事故、テロなどのような自然災害や人為的な事象がこれに該当します。

投機的リスク:損失だけでなく、利益を生む可能性のあるリスクです。為替変動、金利変動、新商品の開発、事業の多角化など、ビジネスや投資の成果に影響を与える要素がこれに含まれます。