1. HOME
  2. 企業経営
  3. 経営層とは?主な業務と役割・管理職との違いについて詳しく解説
企業経営

経営層とは?主な業務と役割・管理職との違いについて詳しく解説

企業経営

ビジネスの舞台裏で会社を動かし、全体の戦略を決定する経営層という存在。彼らの果たす役割は非常に大きいですが、具体的にどのような業務を担っているのでしょうか?また、経営層と管理職はどのように違うのでしょうか?

今回は、組織の中心で活躍する経営層の主な業務と役割に焦点を当て、彼らが果たす組織の中での重要な役割を解明します。

経営者、リーダー、あるいはこれからビジネスの世界に飛び込もうと思っている方々にとって、組織運営のヒントや指針になるような情報を提供します。管理職との違いも比較しながら、より深い理解を得るためにご一読ください。

目次

経営層とは

経営層とは、一般的には代表取締役(社長)、常務、専務といった役員たちで構成され、会社における最上位の地位を占める者たちのことを指します。

また、業務執行を担当する執行役員も経営層に含まれる場合があります。彼らが担当するのは、企業のビジョンの策定、経営戦略の立案と遂行、そして組織全体の監督といった役割です。

それぞれの会社によって、経営層の身分や機能は変わりますが、企業の針路を定め、経営資源を適切に配分する義務を負い、企業、雇用者、株主、顧客、社会の間でのバランスを保ちながら、企業の拡大と連続した成功を目指します。

経営層はまた、企業文化の形成や広報活動も行い、良好な労働環境の確保や、社員の意欲向上に対しても責任を問われます。

経営層と経営者の違いとは

会社を指導し、管理する人物は「経営者」と呼ばれます。経営者とは、社長や会長、中小企業のオーナーなどがこれに該当します。社員を直接的に指導しつつ、事業を統括し、その責任を直接的に負う役割を担っています。

「経営層」という言葉は、経営者を含むより広範な人々を指すために使われます。これには組織全体の管理策や戦略を考える役職が含まれ、取締役会や監査役などが該当します。

個々の経営者が一元的な決定を下すより、多くの人が集まり様々な見解を出し合う「経営層」によるチームでの経営の方が、多面的な視点からの決定が出来ます。個々の見解や提案が一つになり、ビジネス戦略に織り込まれることで、組織はより柔軟な動きを見せ、効率的な運営が可能となります。

経営層と管理職の違いとは

管理職とは、組織内で特定の部署やチームを管理し、目標の達成や日常業務の円滑な運営を担当する人たちを指します。一般的な管理職の例には、部長や課長が挙げられます。彼らは特定の業務領域や部門に焦点を当て、その運営や成果に責任を負います。

対照的に、経営層は組織全体の戦略的な運営と将来の展望に焦点を当て、組織全体の経営判断や戦略の策定に関与する人々を指します。経営層は、事業の道筋を立て、成長戦略を検討し、企業の全体的な成功に向けてリーダーシップを提供します。

最大の違いは、管理職が特定の部署やチームを管轄するのに対し、経営層は組織全体を管轄している点にあります。経営層は戦略的な方向性を示し、全体の成果と長期的な成功に貢献する役割を果たします。

経営 層 の 役割とは?経営層に求められる役割、経営層の 役割 を 解説

経営層には、どのような役割が期待されるのかについて、経営学の権威の視点から考察してみましょう。

ヘンリー・ミンツバーグの経営上の10の役割

ヘンリー・ミンツバーグは、経営学の権威として広く知られ、ピーター・ドラッカーと同様にマネジメント研究への貢献で評価されています。

この大成された学者は、1973年に公表したその博士論文にて、マネジャー(経営層や意思決定を担当する人々)の役割について明確に定義。ミンツバーグによれば、マネジャーに期待される役割は全部で10つあり、これらは「対人的役割」、「情報的役割」、「決定的役割」の3つの部類に細分化されます。

「対人的役割」は、マネジャーがリーダーとして存在感を示し、人間関係を構築する任務を指します。「情報的役割」は、ビジネス活動に必要な情報を探求し、分散させる任務のことを意味します。「決定的役割」は、組織の目指す目標を達成するための戦略を策定し、推進する役割を指します。

マネージャーの役割1:フィギュアヘッド(看板)

この役割は、組織の象徴であり、外部からも組織を代表する存在です。組織内では儀礼的な行事やスピーチを行ったり、外部との対応をすることがあります。そのため、マナーや外見、コンプライアンスへの従順さが要求されます。

マネージャーの役割2:リーダー

この役割は、チームや部署、あるいは組織全体をリードし、メンバー全員のパフォーマンスを管理することを指します。また、メンバー同士との効果的なコミュニケーションを促進し、働きやすい環境を構築する責任もあります。さらに、人員構成や配置の決定もマネージャーの役割に含まれます。

マネージャーの役割3:リエゾン(仲介)

この役割は、マネージャーに社内のメンバーとのコミュニケーションに加えて、顧客や協力会社などとの関係を築き、交渉を行うなど、組織内外の双方で関係を構築することを指します。

マネージャーの役割4:モニター(監視)

この役割は、内部分析を通じて組織内の強みや弱みを把握し、競合の新技術や動向を把握し、組織を取り巻く環境の変化を監視することで、有効な戦略を策定する役割を指します。

マネージャーの役割5:ディセミネーター(周知伝達)

この役割は、組織内に有益な情報を伝達し、組織全体の力を高めたり、共有価値を広めたりして、組織内での基準や判断基準を統一することを指します。

マネージャーの役割6:スポークスマン(広報)

この役割は、組織を代表して、外部に向けて自社の商品やサービス、最新情報などを提供し、組織の価値を向上させる役割を指します。

マネージャーの役割7:アントレプレナー(企業家)

この役割は、組織内で変革を促進し、実行に移すことを指します。組織の変革計画を策定し、必要な人材やリソースを確保し、組織内での調整を行うことで、変革を推進します。

マネージャーの役割8:ディスターバンス・ハンドラー(障害対応、障害処理)

この役割は、組織内で問題やトラブルが発生したり、クレームが寄せられたり、外部から脅威にさらされたりした際に、組織を代表して責任を負い、問題に対処する役割を指します。マネージャーは調停などの手法を用いて問題解決に取り組むこともあります。

マネージャーの役割9:リソース・アロケーター(資源配分者)

この役割は、組織全体で資金、人員、資産などのリソースをどこにどのように配分すべきかを決定し、適切なリソースの配分を行う役割を指します。

マネージャーの役割10:ネゴシエイター(交渉者)

この役割は、組織の利益を確保するために、組織内外で重要な事項について交渉を担当する役割を指します。

ピーター・ドラッカーの経営者の役割

ピーター・ドラッカーは、終生にわたり多くの著書を執筆し、コンサルタントや大学教授としても活動し、近代の経営哲学に大きな影響を与えた重要な人物です。

彼の著書の中でも、特に有名なのが『経営者の条件』です。この本で、ドラッカーは成功するために次の5つの習慣が不可欠であると説きました。

・時間の適切な管理
・顧客への貢献
・強みの発揮
・重要事項への集中
・正しい意思決定

また、ドラッカーは経営者や経営層に対して、事業戦略の策定、資金の配分、人材配置といった役割を果たすべきだと述べました。

経営層の具体的な仕事内容

経営層の主な業務についてご紹介します。

経営方針等の設定・浸透

経営層の主な業務内容は、企業の経営戦略や方針を定め、その精神を組織全体に広めることとなります。

さらに重要となるのが、創り出した経営方針を組織全体に広めることです。これを実現するには、組織内交流の強化が必要となり、経営層が自ら先頭に立ち、その理念やビジョンを具体的に伝達し、全社員が理解し共感することで、全体として一致団結し、同じ目標に向かって動き出すことを確実にします。

このように、経営層の仕事は、経営戦略の設定とその普及が基本となり、それらを達成するためには、戦略的な考え方と堅実なリーダーシップスキルが求められます。これを具現化する一つの手法がMVV、つまりミッション(使命)、ビジョン(理想)、バリュー(価値観)の設定です。これこそが、企業がどのような方向性で事業を進展させていくべきかを明確に示すものであり、経営層が頂点に立って、それらを社内に深く浸透させていく役割が求められます。その具体的な方法としては、社内報による通知、経営層自身によるビデオメッセージ、あるいは社員教育に組み入れるなどが考えられます。

組織の整備

成功した事業運営は、効果的な組織の機構を持つことが不可欠です。誰が何を指示し、誰にどんな範囲の権限を付与するのか、組織内部でどのように業務分担を進行させるのかなど、経営体制の役割は会社の組織の骨組みをつくり上げることです。

主要な組織形態には、役割に基づいて構築される組織、プロジェクト毎に編成されるチームベースの組織、業務の内容に基づいて構成される部門制度の組織があります。

どの組織形態が最適かは、事業の性質や企業の規模により異なります。経営階層は組織が円滑に動くように、指示と権限を鑑みて組織形態を決定し、必要に応じて組織の再構成を行うのです。

社員の採用・育成・評価

人材は、ビジネスの成功を決定付けるカギとなる一つの要素です。経営目標を達成するためには、経営陣自身が社員の採用、育成、そして評価というプロセスに積極的に関与するべきです。

スタート地点となる「採用」については、経営層が中心となって積極的に関わることが重要です。何を成し遂げたいのか、どんな人材を求めているのかを明確にし、その情報を人事部門と共有することで、適切な人材獲得のプロセスを進めるべきです。

続いて、「育成」について考えます。採用された社員が完全に能力を発揮し、会社の一員として活躍できるようにするために、その育成は欠かせません。職員教育の体系を作り、効果的な育成プログラム導入など、これらもまた経営層の大切な役割です。

最後に、「評価」についてです。社員が意欲を持って働くため、そして才能が他の会社に流出しないようにするためにも、個々の業績を公平に評価する体制を整えることが求められます。

これら全てを踏まえると、経営陣の重要な役割は、社員の採用から育成、そして評価に至るまでのプロセスをしっかりと管理し、強固な組織作りに努めることです。これこそが、経営者に求められる極めて重要な仕事と言えるでしょう。

事業推進

企業を経営する立場として、実際に「事業開発」という任務を前進させるためには、数多くのミッションが待ち受けています。その中でも、重要視されますのが事業の拡大に向けたプランニングと、それを追求するための体制作りです。

ある程度の規模を持つ企業であれば、問題点の特定と、それを改善するための環境整備が不可欠となります。さらに、M&Aなどの新たな事業を導入するための策動、中長期的な事業計画の策定もその担当領域に含まれます。

小規模な事業体では、経営層は時にフロントラインに出て、直接マーケットの空気を感じ取ることも必要とされます。そのためには、専門的な調査や分析を行い、顧客のニーズを把握し、そのニーズに応える新たな製品やサービスを生み出すことが求められます。また、経営層は最終的に全ての決断を下す立場にありますから、社内案に対しても最後の意思決定を行うという役目も担っています。

資金繰り

経営層にとって、資金繰りの理解とその実施は非常に重要な業務です。資金繰りとは、資金の出入りを適切に管理することで、これにより企業の営業を円滑に進めるためのフレームワークを提供します。

資金繰りは、単に入出金を追いかけるだけではなく、企業の財務状況を見極めるための重要な手段でもあります。利益が出ているように見えても、例えば取引先からの支払いが遅れるなどして現金不足に陥ることもあります。このような現金不足が続くと、企業の健全性に影響を及ぼす可能性があります。

経営層はこのような資金繰りの問題を未然に防ぐべく、経費削減や資金調達などの必要な行動を起こします。

また、資金繰りが悪化した際には、その原因を特定し適切な対策を講じる役割も担っています。このような業務は企業の健全な成長と競争力を維持するために欠かせない作業であると言えるでしょう。

経営層に必要な能力

経営層にはどのようなスキルが必要なのでしょうか。求められる能力について解説します。

会計知識

経営層が全ての会計業務を把握する必要はなく、日常の会計作業は組内の専門スタッフ、税務は税理士に任せられます。しかし、会計へのある程度の理解は、事業を適切に管理するために不可欠です。

経営の判断を下すにあたり、会社の財務状態を把握するためには、最低でも財務諸表の読解能力が必要となります。

決算書、特に企業の財政健全性を反映する貸借対照表、ビジネスパフォーマンスを示す損益計算書、およびキャッシュフローの動きを捉えるキャッシュ・フロー計算書は、経営者にとって重要な情報源です。

これらの各々の財務諸表に表示される項目が何を示し、数字が何を意味し、どのように組み合わせて財務分析を行うかといった基本的な会計知識は、経営者として必要不可欠です。

ヒューマンスキル

経営陣の中で果たすべき役割は広範囲に渡るものの、その中でも人間関係を築く能力、すなわち「ヒューマンスキル」は必須の資質といえます。経営陣とは、全社員の活動を統括し、理想の実現に繋がる指南者であるため、一人ひとりの能力を適切に活用し、快適な作業環境を実現することが求められます。

「ヒューマンスキル」とは、コミュニケーション能力、リーダーシップ、共感力、チームの形成力といった多様なスキルや知識の一部です。これらを習得することで、大規模プロジェクトをスムーズに推進し、組織全体のパフォーマンスを向上させることが可能となります。

コミュニケーション能力を通じて関係性を築き、リーダーシップを示して方向性を示し、共感力で心の繋がりを深め、チーム形成力で組織力を強化する。これがヒューマンスキルを活用した経営陣のあり方であり、ヒューマンスキルこそが組織の対外関係をも左右し、組織の未来にとって重要な鍵となります。

ヒューマンスキルは、良好な人間関係を実現するための総合的なスキルであり、その中にはリーダーシップやコミュニケーション力、プレゼンテーション能力、ヒアリング力、交渉力、コーチング能力、ファシリテーション能力(進行力や調整力)、向上心などが含まれます。

戦略的思考力

戦略的思考力という言葉は、企業を効率的な方向へ導くための論理的思考法を表すものです。これを身につけるためには、新しいビジョンを作り出し広げる力、物事を多角的に見る分析力、過去の枠にとらわれない創造力、問題解決を主導する仮説作りの腕前、具体的なシナリオを組み立てる力、そして最適な判断を下す決定力が求められます。

現代のビジネス環境は驚くほどスピードが早く、自らの方向性を見つけるためには新たなアイデアやトレンドを絶えず監視しなければなりません。この中からタイミングよくビジネスチャンスを認識し活用するためには、戦略的思考による適切な経営が求められています。このような考え方を経営層が持つことは、企業全体の成長や個々のスタッフの発展にも寄与するのです。

決断力

決断力とは、発生した問題への直面と解決、会社の未来を創造する能力とも言えます。厳しい状況下でも頭を冷静に保ち、正確な判断をするためには、情報収集とその分析、そして過去の経験や知識が不可欠です。

その一方で、決断力を身につけるためにも常に学び続ける姿勢が求められます。周囲との良質なコミュニケーションはもちろん、新たな業界情報をキャッチアップすること、自身の過ちから学びを得る能力など、多くの要素を会得することが求められます。

時には決断が誤りを生むこともありますが、そこから学びを得て修正を行なう事により、良き未来への道しるべとなります。このような決断力は、企業成長だけでなく、従業員の働きがいを高めるためにも必要です。だからこそ経営層は、迅速且つ適切な決断を下すことが重要となるのです。

先見力

絶えず試行錯誤を繰り返しながら先を見通すことは、遥かなる眼識と繊細な判断力を必要とするため、真に先見力を発揮し続ける経営者はその数が限られています。

しかしながら、先見力は変わりゆく時代の流れに立ち向かい、ビジネスを競争の先頭に立たせるために決して欠かすことのできない要素です。そのため経営者たちは日々の業務の中で自らの洞察力を鍛錬し、先見力を高める工夫を怠らず、それを事業に実装することが求められます。

まとめ

経営層は企業戦略の立案・実行、リスク管理、財務管理など全体を見渡す役割を果たし、その視野は管理職以上に求められます。管理職が部門の成功を追求するのに対し、経営層は会社全体の利益最大化を目指し、より高い視座で判断を下す必要があります。

よくある質問

部長は経営層ですか?

部長は経営層の一員として位置づけられ、経営資源を効果的に活用し、組織の成長と収益向上に直接寄与する役割が期待されます。

さらに、部門や部署の業務を監督し、人材スキルの管理や組織体制の強化を行うだけでなく、業務の改善策や新規事業の展開など、長期的な視点を持って業務を推進する責務も頻繁に求められます。

経営層の役職にはどんなものがありますか?

経営層の主要な役職には、CEO、COO、CFO、CIO、CMO、CTO、ディビジョン・ヘッド、部長、常務取締役、専務取締役、執行役員などが含まれます。それぞれが特定の経営責任を担い、会社の戦略と運営に影響を与えます。

経営者になるためには?

経営者になるには、以下の方法が考えられます。起業、出世による経営層入り、雇われ社長になる、事業を継承する、フランチャイズを開業するなど。また、持続的な事業運営を成功させるためには、経営、財務、マーケティングなど多岐にわたる知識を習得し、積極的に学ぶ姿勢が不可欠です。