1. HOME
  2. コンサル業界・キャリア
  3. 企業に必要な会社員の副業・兼業対応について解説
コンサル業界・キャリア

企業に必要な会社員の副業・兼業対応について解説

近年、働き方の多樣化が進む中で、会社員の副業や兼業が注目を浴びています。しかしながら、企業側から見れば、従業員の副業・兼業には多くの課題が存在します。副業解禁することによる情報漏洩の危険性、業務に対する影響、職務遂行能力の損ないなど、その対応に頭を悩ませている企業も少なくないでしょう。

この記事では、企業が副業・兼業を上手く取り扱うための対応と、その効果的な活用方法について詳しく解説していきます。

 

「副業」の動向

副業の取り組みが、近年新たな局面を迎えています。働き方の変革を求める声が高まる中、一昨年施行された「働き方改革関連法」により、「副業・兼業」が推進され、会社員が独自のスキルを利用した、主職以外での活動が広く受け入れられてきました。

さらに、新型コロナウイルスの影響による働き方の変化が、テレワークやリモートワークの導入を加速させ、自宅での業務時間の増加に伴い、副業に挑戦するという新たなトレンドが浮上しています。

副業の動きや専門家への需要増加と共に、これらの問題をサポートする新しいビジネスも登場しています。全体として、副業の受け入れ方や活用方法が社会の関心事となりつつあります。今後の副業の流れや、それに対応する方法に注目が集まっています。

副業希望者の年齢層と動き

株式会社リクルートの最新調査によれば、現在社会の主流となりつつある副業に多大な関心を示しているのは20代後半の社会人と、30代初頭を中心とした若い世代で、その割合はそれぞれ21%、及び50.3%に及びます。これらの世代は主にIT系の技術を活かした副業を行っており、自宅やカフェなどでプログラミングやウェブデザイン、ライティング等の仕事を請け負っています。積極的に新しいスキルアップを目指す彼らの姿勢は、現代社会で求められる能力の具現化であり、十分な収益をもたらしています。

副業を導入する50代以上の高齢層は、視野を広げるとともに生活設計を見直す目的を抱いています。彼らの副業の形態は自身の長年培った専門知識や経験を活かしたコンサルタント・講師の仕事に多く、ハンドメイドや園芸などの趣味を活かしたビジネスも見受けられます。

また、求職者の傾向も興味深いものがあります。株式会社カカクコムのデータによると、求人検索キーワード「副業」の検索数は2019年1月のものと比較すると5倍以上に増加しており、昨年から更なる上昇を続けています。特に「副業OK」の要素を転職・就職の選考基準として重視する求職者が増加していると見られ、2021年の新卒求人の検索行動にもその影響が明らかとなっています。

副業を希望する理由

「副業」を選択する人々が増加傾向にありますが、その理由は何なのでしょうか。

パーソル総合研究所が発表した2021年の「副業実態・意識調査結果【個人編】」によると、副業を行う正社員の動機の一位は「副収入(趣味に充てる資金)を得たい」で、参加者の70.4%がこれを理由に挙げています。また、「その先の収入に対する不安」が61.2%で2位に、「本業だけでは足りない生活費」が59.8%で3位に位置しています。これらの結果から、副業を選択する一番の引き金は収入向上の願いであることが明らかとなります。

さらに、同調査結果を2018年と比較すると、「自分の時間の有効活用」「自身のキャリアアップの機会」が副業を選択する動因として増えています。2018年のランキング15位であった「時間を持て余していたから」は、新型コロナウイルスの影響により2021年では10位まで上昇しました。この結果からは、時間が余裕を持つことで、副業を通じて自己成長を求める人が多く存在することが読み取れます。

*参照 :パーソル総合研究所. 2021年.副業に関する調査結果(個人編)
https://rc.persol-group.co.jp/news/202108131000.html

会社員の副業・兼業への対応

副業解禁にあたり、企業としては副業・兼業のルールを明確に設定することが必要です。例えば、業務時間外のみ、または休日のみの許可といった規則作りが重要となるでしょう。また、個々の社員の状況をしっかりと把握し、副業・兼業が業務能力に影響を及ぼさないよう対策を講じることも重要となります。

厚生労働省は「副業・兼業を基本的に認めるべき」とのガイドラインを示しており、2023年3月31日から副業・兼業を推進する企業を支援する「副業・兼業支援補助金」の募集も開始しました。これは、会社以外の仕事にも取り組みたいと考える社員が増えていることへの対応です。

このような動きからも、今後は社員が副業を取り組みたいと思い、ルールを設定してそれを可能にする企業が増えるでしょう。経営者側から見れば、特別な事情がなければ、この流れに合わせて対策を検討すべきです。

参照:厚生労働省.平成 30 年 副業・兼業の促進に関するガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000192844.pdf

会社から副業を禁止されてしまう理由とは?

副業の解禁が進む現代社会でありながら、会社員副業禁止の会社も依然として少なくありません。

会社が副業を禁止する理由として、従業員が副業により本業のパフォーマンスが低下する可能性があります。副業による疲労や時間的制約から本職のクオリティが欠けたり、納期を守れない事態が生じることを危惧する企業が珍しくありません。

また、副業が本業と競合する企業で行われる場合、情報漏洩や倫理的な問題が起こるリスクが増大します。これは企業の信頼やブランドイメージを損なう可能性があるため、企業は副業を制限、あるいは禁止する選択をする場合があります。

加えて、労働時間の管理や、過重労働を防ぐという観点から副業が禁止されている動向も見られます。各企業独自の文化や規模、業界特性により副業に対する策は異なるでしょう。

副業の可能性とリスクを評価し続けることで、企業は職員に納得感を与え、新しい働き方を探求し続けられます。目の前の課題に対する明確な解決策が必要とされています。

会社が副業を禁止することは可能?

副業が禁止されてしまうことは実際に可能なのでしょうか?

結論から言うと、副業禁止の会社そのものが完全に違法とされているわけではないのです。しかし、労働者の健康保護や職務遂行能力が欠けてしまうと判断された場合、副業は禁止されることが法律によって許されているというのが現在の法の位置付けです。

近年、政府は「働き方改革」を推し進めており、「副業・兼業の推奨」をその一部として挙げています。このような制度の変更に伴い、企業側もその規定を見直す必要が出てきています。それでも、全ての企業が副業を容認するわけではありません。これは業績、業務の特性、そして重要な企業文化など、様々な要素が影響しているためです。

社員の副業の是非を判断する際には、労働者の自由と会社の経営バランスの観点から進めるべきと言えます。ただし、その基準は法律や社会状況の影響を直接受けるため、個別の具体的な事例については適切な検討が不可欠です。

契約社員は副業可能?

契約社員の副業は可能です。しかしながら、契約社員の立場から見ると、この答えは必ずしも全面的には当てはまらないでしょう。副業可否はその人が勤める会社の規定や契約内容に大きく左右されるからです。

最近では、副業をして良いとする企業も増えています。しかし、仮にそのような会社であったとしても、副業の有無については必ず契約内容を確認するべきです。契約書や就業規則で副業が禁止されている場合、その条項を破ると、契約違反になり、解雇といった厳しい処置を受ける可能性があります。

一方、「副業禁止」の表記が見当たらないと副業が認められているわけではありません。会社の許可が必要な場合もあり、また、業務時間後の副業でも、競業防止に抵触する可能性があります。

「副業」需要の高まりに対する企業の対応

2020年になり、大企業やメガバンク、ヤフー、三菱地所を含む一部の企業が副業を解禁したことで、認知度が上がってきています。この動きは、政府が進める働き方改革の一環であり、今後さらに広がるとみられます。

パーソル総合研究所の2021年発表の調査結果によれば、企業全体で見ると「副業」を容認している企業が55.0%と、前回の調査時よりも3.8ポイント増加しています。特に注目すべきは全面容認の率で、14.4%から急速に伸びて23.7%に達しました。

ただし、まだ全面禁止を続けている企業も45.1%と少なくありません。これは、副業をして良いと認めることによる機密情報の流出や人材の外部流出などの懸念点があるからです。

副業解禁の際には、企業側もこれらのリスクをしっかりと管理し、適切なルールを設けることが求められます。

*参照 : パーソル総合研究所.2021年.第二回 副業の実態・意識に関する定量調査
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/sidejob2.html

 

副業・兼業を認めるメリット

副業・兼業を認めるメリットについて詳しくご紹介します。

収入の増加

正規雇用の社員と比較して、契約社員の給与や福利厚生が見劣りする場合が多々ありますが、副業や兼業を許可することで、収入の補充が可能となるため、その認証は徐々に広まっています。

副業や兼業によって得られる収入が多角化すれば、その分、生活の質の向上や、より高度な消費生活が可能となり、経済全体の活性化に寄与することになります。

また、副業を通じて習得した知識や技術が本職における業務にフィードバックされることで、新たな価値を創出することが可能となるケースも見受けられます。多

職種が許容される社会では、働き方の多様性や、キャリアの自由度が拡大することにより、働く意欲や、業務へのパフォーマンスも上昇します。

スキルアップ

副業や兼業を社員に許すことには、多くの長所が見出されますが、何より重視すべきはスキル向上につながる可能性です。社員が様々な職場で働くことは、自分自身でも気付いていなかった才能を見つける優れた機会になりえます。それにより職場で育まれるスキルが、個々のプロフェッショナル力を拡張します。

たとえば、自身の副業としてビジネスを運営することは経営知識や組織運用スキル、リーダーシップを身に着ける道となり、異業種への副業も業界間視点を広げ、新しい視ちからやアイデアを創出する助けになります。さらに他の職場や仕事を経験することで、従来の業務範囲から外れた対応力、コミュニケーション力、タイムマネジメントのスキルも向上するでしょう。これらは社員にとって、メインの業務でも有用なスキルです。

優秀な人材が流出しにくい

優秀なスタッフを自社に留めるための策として、副業や兼業の許可が重要な役割を果たしています。

一部の人材が他社に移籍してしまう原因は、「報酬が低い」「新しい仕事を探したい」などさまざまです。もし、社員の待遇を改善し、また職種を多角化できるとなれば最良の解決策ですが、現実にはそれが困難な状況も多いです。

そこで注目すべきなのが、副業や兼業の許可です。副業や兼業は、スタッフの報酬を増やす助けとなります。さらに、社員が他の企業で働くことも可能となるため、「新しい仕事にチャレンジしたい」という欲求も満たすことができます。

副業・兼業を認めるデメリット・注意点

副業・兼業を認めることに伴い、デメリットも発生します。懸念点や注意事項についてご紹介します。

労働時間は副業・兼業で通算する

デメリットの1つは、副業が労働時間の合計になるという大きなマイナス点です。つまり、本業と副業の労働時間が一緒になってしまい、法定労働時間を越えた場合、過労の可能性が生まれます。労働者の健康や生産性を害する可能性があるため、個々の業務量や業務にかける時間の管理が必要です。

副業や兼業の適切な管理のためには、情報の共有やコミュニケーションが重要です。その結果、そのための時間やリソースが増える可能性があり、これも欠点と捉えることができます。各労働者に適した働き方を見つけ、そのバランスを保持するための労働管理が必要になります。

本業に支障をきたすリスク

副業・兼業に没頭しすぎると、本業に支障をきたす可能性が待ち構えています。副業に熱中し本業のパフォーマンスが低下し、その結果として業績が下がることを示しています。

本業との両立は容易なものではありません。時間は一日に限られており、副業に掛けすぎると健康面やプライバシーを犠牲にし、ストレスがたまり体調を崩す可能性も考えられます。

副業・兼業を認める企業や個人は、自己管理力を高め、本業に支障をきたさないための解決策を見つける必要があります。一例として、労働時間の管理や適切な休み時間の確保などが重要となります。

秘密保持・競業避止に関するトラブルの恐れ

特に重要なのが秘密保持の課題です。社員が複数の職場を持つと、個々の会社の情報が流出する可能性が出てきます。

また同様の問題として、競業禁止義務についての注意も必要です。同業他社で働くという行為は、競業禁止義務に反する可能性があり、企業秘密の流出や顧客を奪い合う状況が生じる恐れがあります。

社員の副業を解禁するのに必要な準備・ポイント

副業や兼業を認める企業には、以下のような準備が必要です。

副業をふまえた就業規則等の改定

副業が認められている企業が増えている現状に対応して、従業員の副業に関する就業規則の改定が求められています。

副業の認可を進めるための準備として、副業が従業員のワークロードを増やさないような配慮が必要です。副業によって発生する労働時間の調整や、副業が業績に与える影響を考えることが必要です。

副業における就業規則の明確化が、整備の一部として義務付けられています。従業員がどのような副業をすることが可能で、どのようなケースでは申請が必要であるかを明記し、問題の発生を防止することが重要です。副業がもたらす可能性のある利益相反や業務競合についてのガイドラインの設定も欠かせません。

就業規則の改定内容は、労働法や先行判例、自社の権利保護を鑑みた上で整備することが好ましいものとなります。また、厚生労働省のガイドラインを参照したり、弁護士や社会保険労務士等の専門家に助言を求めることも、適切な道筋を示す助けとなります。

契約書等の整備

副業を解禁する際には、契約書などの文書整備がまず求められます。業務委託契約書や秘密保持契約書の見直しと共に、副業の許可事項を具体的に記載しましょう。副業が社員の主な仕事と競合しないように、明確な規定を設けることが重要です。

労働時間管理の仕組み構築

副業が認められることで社員は多面的な働き方を選択できますが、それと同時に企業は「安全配慮義務」という労働法規制を遵守するために、勤怠管理体制の改善が必要となります。

具体的には、労働時間の上限を確立し、適切な休憩時間を取るよう社員に指導し、また、長時間労働による健康問題を未然に防ぐなどの働き方改革を進めることが求められます。さらに、労働時間管理システムの導入や、その機能の強化も考慮に入れるべきです。特にクラウド型のシステムは、補助金の対象となるので推奨されます。

副業や兼業が会社の業績に及ぼす影響を把握するための評価基準の設定、そして社員の能力や業績に基づいた報酬体系の導入も重要でしょう。これにより、社員の満足度やモチベーションが向上します。

健康管理のための体制整備

健康管理の手段としては、労働安全衛生法に則った定期的な健康診断や、過度な労働の状況を把握するための面接指導、またメンタル面でのストレスチェックの強化が有効でしょう。

副業・兼業が原因で働き過ぎとならないよう、その制限や指導も重要です。その過程で、副業・兼業先ともに連携を図り、労働時間の適切な管理をすることが求められます。加えて、休日出勤や残業を減らすことにも努めなければなりません。

まとめ

企業が副業・兼業を理解し、適切な対応と活用方法を把握することで、シチュエーションに応じた柔軟な働き方が可能となる。これにより、伸び悩む売上の革新、社員のワークライフバランスの改善、企業の持続可能な発展が期待できます。

よくある質問

会社で働くのに副業してもいいですか?

まず忘れてはならないのは、副業を始める前には、自分が所属する会社の契約内容や就業規則に則ることが必要不可欠である、ということです。この確認が不十分だと、深刻な問題を引き起こす可能性があります。副業が認められている企業も増えていますが、それでも副業許可の企業が全てではないのです。

正社員が副業を会社にばれない方法はありますか?

副業による収入を会社に知られずに済ませる方法として、確定申告の際、「住民税に関する事項」で「自分で交付」のオプションを選択するという方法があります。これにより、副業で得た収入(雑所得)に対する住民税の通知が自宅に送られ、自分自身で住民税の納税することになります。

副業の収入が20万円以下であれば、確定申告の必要はない場合があります。ただし、このようなケースでも確定申告を行うことで、副業の収入を適正に申告し、税金を納めることができます。これは法令を守る一環として重要な対応です。

副業禁止の会社で副業したら、どうなる?

副業禁止の会社の就業規則や労働契約で副業が明文字で禁じられている状況では、副業の事実が露見した場合、解雇や懲戒処分のようなリスクが存在します。

また、社内での評価ダウンや、昇進や昇給の困難、人間関係の悪化等、目に見えない影響も起こり得ます。副業を希望する方々には、企業の規則を把握し、適切な行動をとることが重要です。副業禁止の旨が明記されている会社の就業規則は、必ず確認するべきです。