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リスキリングとは?DXとの関係や導入時のポイント

近年、テクノロジーの急速な進化と共に、企業が取り組むべき経営課題の一つとして、「リスキリング」や「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が注目されています。これらのキーワードを無視しては、事業成長や競争力の低下、あるいは人材離れに繋がる可能性があります。

しかし、一方でこれらの概念は一見すると難解で理解しにくいものであったり、企業が取り組むべき具体的な手段が不明確な場合が多いです。

本稿では、リスキリングが具体的に何を指すのか、そしてこれがDXとどのような関連性を持ち、どのように企業に導入すべきなのか、そのポイントを明らかにしていきたいと思います。

目次

リスキリングとは

リスキリングとは何かというと、将来的に必要とされる、新たな職種や業界で活用可能なスキルや知識を学び直す仕組みのことを指します。

今日、我々は「第4次産業革命」の時代を生きており、ロボットが人の作業を引き継ぐケースがますます増えています。これには、商品制作や、事務作業、倉庫での手作業などが含まれます。

しかし、このような業務がロボットに転換されるということは、それまでその作業を担当していた労働者が職を失う可能性があるという懸念も生じます。とはいえ、ロボットが作業を引き継ぐ一方で、新たな仕事も生まれます。

それらは、ロボットの内部で動くプログラムを設計する業務や、社内システムの管理業務、システムを取り扱うスタッフの調整業務などです。

ただし、これらの新たな業務を能力的にこなすためには、対応するスキルや知識の習得が必要です。ここにリスキリングの重要性が浮かび上がります。リスキリングの取り組みを通じて、これら新たな業務に対応するスキルや知識を身につけていけば、労働者は新たな職種に適用することが可能となるのです。

リスキリングとリカレントとの違いとは

リスキリングとリカレントはともに、個人のスキルセットを増強することを目指すものですが、それぞれ異なる目的と手段を持っています。

リスキリングは、新たな業界や職種への適応を目指すための「新スキル獲得」を中心に据えています。テクノロジーや産業の進歩に伴い、一部の職種が消滅し、別の新たな職種が台頭する中で、企業が従業員に新しいスキルを身につけさせることに重きを置いているのです。例えば、自動化技術の普及により生産ライン作業からプログラミングスキルが求められるようになるようなシフトでは、リスキリングが必須となります。

一方で、リカレントは「現有のスキルの再活用」や「知識のアップデート」が主軸です。既に習得しているスキルや知識を現代の環境に合わせて更新し、あるいは大学等で新たなスキルを学び直し、現行の職種や職場環境に対応することを目指すものです。

リスキリングとアンラーニングとの違いとは

リスキリングは新たなスキルを吸収し、現行の職務に適応したり、新しい職業の進路を作ることを示します。例として、データ解析のスキルを修得し、会社のビジネスインテリジェンス部門に転属するといった事例が挙げられます。

一方で、アンラーニングまたは「学習棄却」とは旧知識、スキル、概念を意識的に放棄することを指します。これは新たな知識を習得する際に、過去の知識が邪魔をするときに特に重要となります。たとえば、古いソフトウェア操作方法を「忘れる」ことで、新しいソフトウェアに適合する場合がこれに該当します。

従って、リスキリングは「新スキルの取得」、アンラーニングは「旧知識の削除」を目指すことで相違が存在します。

リスキリングが話題になっている理由とは

リスキリングが話題になっている理由をご紹介します。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進

DXというのは、デジタル技術を用いて企業内の業務を一新する試みのことを指します。それによって、コンピューターやAIなどデジタル技術を用いて業務を遂行する仕組みが確立し、業務効率の向上やサービスの質の改善などへと繋がります。

しかし、DXを推進するためには、関連する知識やスキルが必要となり、それがない方は新たに学ばなければなりません。それがリスキリングの具体的な意味であり、その重要性が注目されています。

さらに、AIやロボット技術の進歩は、これまでにない速さで進んでおり、人間の仕事のフィールドは大きく変わりつつあります。特に、ChatGPTなどジェネレーティブAIの出現により、これまで安全とされていた創作系の仕事にも影響が及び始めています。

働き方の変化

主要な要因として、職場環境の変化が挙げられます。新型コロナウイルスの影響でテレワークが増え、顧客との接触が対面からオンラインベースに切り替わるなど、働き方自体が変容しています。これらの変化に対応するため、既存の知識や経験だけではなく、新たなスキルの習得が必要となり、リスキリングが求められるのです。

さらに、消費者のニーズが一層個別化・多様化し、新たなエリアへの進出や視野の広げ方が要求されるようになりました。こうした要求に応えるためにも、リスキリングは欠かせません。

また、キャリア形成の過程で役職や業界を変える方々が増える中、既存のスキルセットだけでは対処できない課題に立ち向かうため、リスキリングが重視されています。

リスキリングに関する宣言

重要視したいのはリスキリングの必要性についてです。それは、テクノロジーの進歩と共に共に自身も進歩し続ける必要があるということです。これが、社会とともに進歩し続けるための鍵であります。

例を挙げれば、2020年に開催された世界経済(ダボス)会議では「2030年までに地球人口のうち10億人をリスキリングする」と言明しております。経団連もまた、2020年の新成長戦略内でリスキリングの必要性を訴えています。

2022年に岸田総理が示した具体的な取り組みもあります。その中には、新たな助成制度の導入や、リスキリングを含む転職支援の一貫した取り組みなどが含まれております。

これは、岸田総理が唱える「新しい資本主義」実現へのステップであり、一人ひとりへの投資、すなわちリスキリングが重要とされています。また、5年間で1兆円のリスキリング支援を実施する方針も示しており、国内でのリスキリングの動きが活発になることが予想されています。今後、企業も社員へのリスキリング支援を更に強化し、新たな時代に備えることが求められるでしょう。

社内でリスキリングの取り組みを行うメリットとは

リスキリングを行うメリットを見ていきましょう。

アイデアの創造

リスキリングの導入は企業の持続可能な発展にとって不可欠です。これは、新たなスキルが身につくことにより、従業員が新しい視点や解決策をもたらし、組織全体のパフォーマンスを引き上げるからです。

リスキリングにより従業員がスキルを広げることで、企業は個々の問題解決能力だけでなく、多角的な視点を通じた組織全体の課題解決能力も向上させることができます。さらに、多種多様な背景を持つ従業員が交流し、互いに学び合う環境が整うことで、これまでに見えてこなかった新しいアイデアや革新的な解決策が生まれる可能性が高まります。

人材不足への対応

三菱総合研究所が指摘するような今後10年間での事務職や生産職の人材余剰と、一方で必要とされるデジタル人材の急激な不足。この深刻な人材のミスマッチに対処する有効な方法が、企業内でのリスキリング活動です。

多種多様な職種でスキルの格差が広がる中、自社の人材を再教育し、新たな業界や職場に適応させるリスキリングは、人材の成長と企業のビジネス展開を同時に達成する助けとなります。

新たな業務へのチャレンジは、社員一人ひとりのキャリア形成にも大きな影響を与え、やる気を引き出す要素となります。同時に、新たな視野やアイデアを企業にもたらす新鮮な風も吹き込むでしょう。

また、新規採用にかかる費用を比較すると、独自のスキルアッププログラムに投じる費用の方が明らかにオーソドックスです。既存の社員のノウハウと経験を活かしつつ、新たなスキルの習得を促進することで、組織全体の柔軟性と変動への対応力を高めることができます。

業務の効率化

リスキリングの行程をデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り入れることで、効率的な業務運営が期待できます。

従業員が新たなスキルセットを身につけることで、新しい業務や事業部門への投資が可能となります。営業職の人材がマーケティングの知識を得るなど、部門間の境界が消え、より広範な業務遂行が可能となります。

また、労働時間の管理が改善されます。リスキリングによって社員が複数の業務を理解し、代行できる状態が整えば、残業代が削減され、経済的にも効率化されます。

休暇や病欠で人手不足となった場面でも、適切な代替要員が対応可能です。

リスキリングは企業全体だけでなく、従業員一人ひとりの職業的満足感を高める可能性があります。新たなスキル習得により、従業員自身のキャリアプランが拡大し、視野が広がることで新規の可能性を見つけることも期待できます。

エンゲージメント向上

企業がリスキリングへの取り組みを進めることで、従業員に新たなスキル習得のチャンスを提供し、キャリアの進行を後押しします。このような態度の背後には、従業員が自社に深い愛着を持ち、積極的に業務に取り組む度合いを示すエンゲージメントの重要性があります。

リスキリングにより、社員のスキルセットは常に進化し、企業の戦略的な目標達成に役立つ多様な任務に対処できます。これにより従業員はキャリアの選択肢が増え、自己実現のチャンスが増大します。結果として、彼らの満足感やモチベーションが向上し、企業へのエンゲージメントも高まります。

自律型人材の育成

企業の資産で最も価値があるのは、実はその中にいる人材です。その価値を最大限に引き出すために、多くの企業は社内でリスキリング、つまり既存スキルの強化と新スキル獲得に取り組んでいます。この努力の大きな利点の一つは、自律型人材の育成につながることです。

自律型人材とは、自分で考え、行動し、問題を解決する能力を備えた人材のことを意味します。企業がリスキリングに注力すれば、勿論各々の技能が向上しますが、それ以上に、従業員が自己の力で新たな課題の対処法を模索し、それに適応する力を身につけることができるようになります。これこそが、自律型人材を育て上げる重要なステップと言えます。

自律型人材が増えれば、会社全体の生産性や効率性は格段に向上します。新たな視点やアイデアが湧き出ることで、組織全体が競争力を発揮するための土壌を築くことが可能となります。さらに、従業員の満足感や意欲が増すことで、新たな人材の確保にも大いに寄与します。

リスキリングを導入するステップとは

この章では、リスキリングを導入する方法を解説します。

①習得するスキルの決定

まずは「どのスキルを覚えるべきか」を決定することです。あなたのキャリアを向上させるために何が必要なのか、またはあなたが属する業界や職場の状況、市場の動向によってどのような専門能力が求められているのかをしっかりと見極めることが大切です。

スキル選択は、リスキリングの中でもっとも肝心な段階であり、これが後の計画作成や行動指針に大いに影響を及ぼします。例えば、今の世の中ではAIやロボット技術に対するスキルや知識を持つことがプラスとなるでしょう。一方で、コミュニケーションやリーダーシップといった全ての職種で必要な基本的なスキルも忘れてはいけません。

また、どのスキルを選択するか決定するには、自分の興味や適性、理想とする職業という自身の内面的な視点も大事です。どの才能を最大限に活かすべきなのか、またどのスキルが自己成長や他者にない競争力をつけるのに役立つのかを見定めましょう。

②プログラムを考える

プログラムは、新しいスキルを学ぶための教育する過程を指しますが、企業の要望や、スタッフの能力によって最適な形は変わります。

まずは、必要となる新スキルを具体的に把握することが大切です。これは現在の業界の風向きや、未来のビジネスのニーズから見極めます。それゆえに、そのスキルを身に付けるための有益な教育プログラムを検討し、適切な教育資源やツールを選ぶのです。

そして重要視するべきなのが、スタッフの積極性を喚起し、学習を続けてもらうための環境整備です。定期的なフィードバックや学習成果の見える化などを通じて、学習の進行を後押しする工夫が求められます。これら全てを包括したプログラムが整っていると、スタッフのスキルアップはもちろんのこと、会社全体のパフォーマンス向上にも繋がるでしょう。

③コンテンツ(教材)の決定

リスキリングを導入する際には、必要なスキルに合致したコンテンツの選定が存在します。その選定は、学習者のこれまでのスキルレベルと目標とするスキルレベルに応じて行われます。スキル未経験者や現在のスキルレベルが初級者であれば、初心者向けのコンテンツからスタートすることを推奨します。既に一定レベルの知識や経験がある場合は、更に深いスキルを学べる上位レベルのコンテンツが適しています。

また、コンテンツは目指す職種や業務に直結するものを選択することを忘れてはなりません。理論だけでなく、現場で使えるプラクティカルなスキルを身に着けることが重要です。

さらに、コンテンツ選定においては学習方法も考慮しなければなりません。自習型の教材、インターネットを活用した学習、職場での実践学習(OJT)など、学習者の状況や好みに応じた学習方法を選びます。

④従業員が取り組む

従業員にリスキリングの重要性を伝え、その価値を理解してもらいます。企業は情報を適切に共有し、従業員がその必要性を把握し、自分のスキル向上への動機を見つけるお手伝いをします。

そのうえで、企業はリスキリングを進める際の支援システムをちゃんと整備する必要があります。たとえば、教育プログラムを提供したり、学習時間を設定したりすることで、従業員が新しいスキルを学べる環境を整える必要があります。ただし、この時間設定は従業員の意見を尊重し、作業に不満を生じさせないよう配慮することが必要です。

更なるステップとしては、新たなスキルを身につけた後も、その活用の場を提供し、成果を評価・報酬することで、次のスキルアップに向けた動機付けを維持させることです。

⑤習得したスキルの活用

リスキリングにより新たなスキリルを獲得する最終目標は、そのスキルを現実の現場で利用し、目前の課題を解消することです。新しい技術や業種への対応能力を高めるだけではなく、キャリアの幅を広げるためにも、学んだスキルを実際に生かすことが重要となります。

ただスキルを身につけるだけでなく、適切に活用するためには、どのような状況でそのスキルを用いるべきかを明確に想像することがポイントです。それができれば、自分の持ち味を活かし、最大限の結果を生み出すためのパフォーマンスが可能となります。

リスキリングを終えた後も、自己成長は止めてはなりません。スキルを活用することで得る結果やフィードバックを受け入れ、自身のスキルを再評価し、さらなる学習や改善に取り組むことで、スキルは磨き上げられます。また、スキルを身につけ、それを活かすためには、継続性が求められます。新しいスキルを学んだ後も、それを定期的に使い続けることで、確実に長期的なスキルとして身につけることが可能となります。

そして何より、自分の新たなスキルを実際に使うためには、そのスキルを楽しむことが最も重要です。

リスキリングを実施する上での注意点とは

リスキリングのポイントや注意点をご紹介します。

社内の協力体制を整える

リスキリングの成功を叶えるためには、企業全体での協力体制が求められます。

首尾よく進めるためには、経営陣、人事部、研修部門、また従業員といったリスキリングに直接関与するステークホルダー全員の理解と支持が不可欠です。

リスキリングの必要性や具体的な実行計画、そして全体的なビジョンを明確に伝えることでその協力を得るべきです。

また、リスキリングへの投資については、明確な評価方法と検証のための基準を設定することも大切です。これにより、投入した時間や費用、またその結果を適切に評価し、改善策を導き出すことが可能となります。そのためには、データの収集や情報共有の体制が整っていることが要されます。

会社に合うコンテンツの選択

全てのリスキリングプログラムが、必ずしも全ての会社に適応するわけではなく、企業の必要性、事業戦略、そして従業員のスキルレベルにより、最適なプログラムは変わります。

洋服を選ぶように企業にぴったり合わせてプログラムを選ばないと、時間と費用が浪費され、期待通りの成果が得られない状況になることもあります。

さらに、高度なリスキリングプログラムは専門知識を求められるため、従業員の初期スキルレベルや学習能力も視野に入れることが大切です。スキルの差異が大きいと、プログラムの進行途中で挫折する可能性も出てきます。

モチベーション維持のための仕組みづくり

リスキリングの取り組みは新たなスキルを獲得するという難題に直面しますが、特に持続することそのものが課題となることも少なくありません。

リスキリングの成果を確実にするためには、モチベーションを維持するアプローチが欠かせません。

第一に、共同でリスキリングを進める仲間を見つけること。仲間同士でスキル習得の過程を共有し、お互いを励ましあうことで学習はより楽しみなものになり、成果も上がりやすくなります。

第二に、具体的なインセンティブを設けること。自分自身の進歩を認識し、それを明確に示すマーカーを設定することで、新たなスキル習得への道程が確認しやすく、成果を導くリードマーカーになります。

第三に、自身の成長への気づきを通じてリスキリングに取り組む意識を高めること。リスキリングはあくまでも自己投資の一部であり、それによって成長していることを自身で感じ取るための手段を用意することで、自己肯定感をつけ、積極的にリスキリングに取り組むようになります。

これらのモチベーション維持戦略を適切に用いることで、リスキリングの道筋は明確になり、その難しさを乗り越えるうえでの大きな支えとなるでしょう。

社員の自発性を尊重

AIやRPAなどの新世代テクノロジーの進化に対抗するために、多くの企業では新たなスキルセットを身につける「リスキリング」の取り組みを行っています。その中で重視すべきなのは、参加者の自発性を尊重することです。

企業のニーズに合わせて全員にリスキリングを強制することは可能ですが、それが必ずしも高いモチベーションや継続性を保証することにはなりません。むしろ、被強制的な状況は反発心を生じさせ、逆効果になることもあります。本人が自分のキャリアアップを求め、主体的にリスキリングに取り組むことが学びと成長に繋がります。

リスキリングプログラムを実施する際には、その人の関心や将来の目標をしっかりと掴むことが重要です。それらに基づいて選択肢を提供し、新しいスキルを習得する意義を理解し自発的な学びを生む環境を整備することも必要です。

特に全く新しい分野へのリスキリングは、それなりの負荷とストレスを伴うでしょう。しかし、その中で本人が自分のキャリアプランに基づいてスキルを身につけたいという意思が探求心と成し得るなら、リスキリングはただのスキルアップではなく、新しい働き方への投資となります。

そのため、対象者を決める際には、挙手制のような形で社員の自発性を尊重することが大切です。それがリスキリングの成功へと繋がります。

リスキリングを導入するデメリットとは

リスキリングにはデメリットも存在します。

導入の負担が大きい

リスキリングを導入する際に頻繁に問題視されるのが、その導入にかかる負荷の大きさです。具体的には、既存の業務遂行に追われる現場からの反発、教育プログラムの開発と研修費用と時間、そして何より新たなスキル習得のための期間と労力が必要とされる点です。

これらの課題は短期的な生産性低下やコスト増加を引き起こす可能性があります。組織全体の視野と共有し、長期的な成長と持続可能性を確保する投資として受け入れるには、適切なコミュニケーションや理解が必要不可欠です。

リスキリング導入に伴う大きな負担は確かに存在しますが、急速に変化する労働環境への対応と将来の競争力確保のためには不可避の道といえます。この負担を如何に緩和し、変革を最大限に活用するかが組織の重要な課題です。

リスキリングは単にeラーニングの導入や研修を実施するだけではなく、経営戦略を組み込んだ人材育成やスキル開発が必要です。人事部門は経営陣と協働し、適切な施策を立案する責任が求められます。

さらに、リスキリングは通常業務と並行して行いますが、それにより既存業務の時間が圧迫されてしまうリスクも存在します。リスキリングが残業増加につながり、挙げ句に疲弊する結果を招くのであればそれは本末転倒です。導入時には、もちろんリスキリングが目指す効果も重要ですが、同時に業務効率化も追求し、適度なバランスを保つ事が重要となります。

費用が掛かる

リスキリング実施に伴う資金的負担は無視できず、新たなスキルや知識の習得に必要となる教育資料の購入や、専門家による教育プログラムの提供等から発生します。これは毎月の支出として加算され、会社全体の人材開発費用となります。それを捻出するのはそう簡単なことではありません。

さらに、この道に進むと、従業員自身も自分の時間とエネルギーを割いて学習することが求められます。そのような重荷を背負うことは、なかなか避けることができません。リスキリングの初期投資の大きさはデメリットとしてよく指摘されますが、長期的な視野から見ると、労働力の品質向上や会社の成長につながる可能性があるとも言えます。だからこそ、コストの面をしっかり考えながら、理想のリスキリングの導入を模索すべきです。

たとえば、これまで手がけてこなかったDX等の新スキルを取り入れる場合、それを自社内でリスキリングするのは困難で、外部のエキスパートの助けが求められます。この状況では、目指すべき人材の要件やスキル達成にかかる費用を正確に理解し、それを考慮に入れて慎重に計画を練ることを忘れてはなりません。

リスキリングの事例とは

リスキリングは様々な企業で導入されています。具体的な事例をご紹介します。

マイクロソフト

2020年6月30日に、外部の人材(2,500万人)向けにリスキリングの機会を提供することがアナウンスされました。この取り組みは、新型コロナウイルス感染による経済的なダメージを抑制するために、雇用の創出やスキルの向上を通じて行われます。さらに、他の組織と協力して展開され、世界全体での活動が進められています。

日立製作所

全従業員が対象となるリスキリングが実施され、DXの基礎に関する教育が提供されました。関連するグループ企業である日立アカデミーでは、「DXを推進する人材育成」や「DXリテラシー研修」と呼ばれるプログラムが開催され、これらのプログラムは日立製作所の関係者以外も受講できるようになっています。

三井住友フィナンシャルグループ

2021年3月から、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)は全社員5万人を対象にしたDX教育を開始し、これがリスキリングの事例として注目を集めました。

「SMBCグループ全従業員向けデジタル変革プログラム」と呼ばれるデジタル研修では、1本約10分の動画コンテンツを30本以上、約5時間分用意しているそうです。

富士通

富士通では、パーパスの実現に向けて「社内DX」を一つの課題と位置づけ、具体的には「データドリブン経営強化」「DX人材の進化と生産性向上」「全員参加型、エコシステム型のDX推進」に取り組んでいます。

リスキリングを促進し、マーケット分析やDX構想策定、デザイン思考などのスキルを座学で学ぶだけでなく、実際のDXプロジェクトに積極的に参加する実践的な内容もプログラムに組み込まれています。

まとめ

リスキリングは従業員のスキルを再編成・再教育することで、DXが事業のデジタル化を目指す中で欠かせません。

成功のポイントは、全社的な取り組み、個々の能力向上を重視し、その過程でのコミュニケーションとフォローアップです。これにより、事業の競争力強化と人材の定着を図ることが可能となります。

よくある質問

リスキリングとはどういう意味か?

リスキリングとは、働き方の変化に伴い今後新たに発生する業務に必要なスキルや知識を習得するための取り組みであり、従業員が勉強することを目的としています。

ビジネスにおけるリスキリングとは?

ビジネスにおけるリスキリングとは、新たな分野や職務で必要な新しいスキルを習得するプロセスを指します。産業構造の変化や人材不足、人的資本経営へのシフト、そして自律的なキャリア形成など、ビジネス環境の変化がリスキリングの注目度を高めています。

従業員のリスキリングとはどういうことでしょうか?

従業員のリスキリングとは、技術革新やDX推進などの変化に適応するために、新しい知識やスキルを身につけるプロセスや、それを促進する取り組みを指します。急激な時代の変化に対応し、新しい職種に就くためには、再学習が必要です。同時に、業務上で必要なスキルが変化している場合には、企業が積極的に従業員のスキルアップをサポートすることが求められます。

リスキリングで40代が何を学ぶべきか?

40代がリスキリングを検討する際におすすめな学びの一環として、Webスキルの習得が挙げられます。この分野では、Webデザイン、コーディング、Webマーケティング、データ分析など、多岐にわたるスキルが獲得できます。これらのスキルは、現代のデジタル化されたビジネス環境において極めて重要であり、多くの業界で需要が高まっています。

経済産業省の定義するリスキリングとは?

経済産業省が定義するリスキリングとは、「技術革新やビジネスモデルの変革に適応するために、新たな知識やスキルを習得すること」を指します。経済産業省は、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。