ネットワーク型組織とは?メリット・デメリットや事例をご紹介
現代社会において、組甹づくりは従業員の生産性や業績に直結する至極重要な素因であり、その中で特に注目されているのがネットワーク型組織です。企業組織においてはネットワーク型組織が、古典的な階層型に取って代わりつつあると言われています。
では、ネットワーク型組織とは具体的に何を指すのでしょうか?また、その特性やメリット・デメリットは何か、活用事例を用いて解き明かしてまいります。本稿は組織運営に新しい視角を提供し、組織改善、業績向上実現の一助となることを目指します。
目次
ネットワーク型組織とは
企業の組織体制には主に「ネットワーク型組織」と「階層型組織」の2種類があります。このうち、「ネットワーク型組織」は、伝統的な階層制度や絶対的なリーダーシップに依存せず、メンバー全員がフラットにアイディアを出し合い、協力して業務を進める組織形態を指します。
固定の役職や部署を持たず、人材を必要に応じて組織間で一時的に動かし、プロジェクトに最適なチームを編成します。
自由な発言やスピーディな意思決定が可能な点、また誰もが直接業務に参加できる環境が特徴として挙げられます。このため、比較的規模が小さく、フレキシブルな動きが求められるスタートアップ企業などで多く見られます。
IT技術の発達により、チャットツールやグループウェアなどを用いたコミュニケーションも手に入れやすくなり、ネットワーク型組織を作るのが以前よりも容易になっています。リモートワークにも適応しやすいのも大きなメリットと言えるでしょう。
階層型組織との違いとは
長年にわたり、多くの企業や団体は、役割分担や上下関係の明確な階層型組織を採用してきました。この組織形態は、ピラミッドのように一方向に構成され、上位者から下位者へと一定の命令や指導が流れていくもので、その権限と責任の所在が明確なため、規模の大きい組織や官僚機構に向いています。
しかし、このタイプの組織では、情報伝達に時間がかかるという問題を抱えてきました。
最近の社会環境やデジタル化、情報流通の速度、人々の価値観の変化などに対応するため、新たな組織形態が注目され始めています。それが、フラットな組織形態です。
この組織型では、一般的なピラミッド型の階層構造はありがちではなく、組織内の情報伝達や意思決定が水平的に進行します。この新しい形態は、状況に応じた迅速な対応や、社員全員が意思決定や問題解決に参加し、新たなアイデアを生む可能性を高める目的があります。
両者の主な違いは、垂直的な階層と命令系統が特徴の階層型組織と、水平的な意思決定とコラボレーションが特徴のフラットな組織の運営方針の違いです。どちらが優れていると一概には言えません。それは、その組織のビジョンや目標、企業文化、ビジネスの特性等により、適切な形態を選択すべきでしょう。
ハイブリッド型組織とは
「ハイブリッド型組織」とは、一定のリーダーシップを持ちつつも、部門間の壁を越えた素早い結論を導くことができる企業風土を指します。
過去には、「機能型組織」が主流で、特定のエリアにおけるプロフェッショナリズムとスキルをもったチームが特化し、また「分散型組織」においてトップマネジメントから展開される意志決定が取られました。
絶え間なく移り変わる今日のビジネス風土においては、固定観念にとらわれず、全体として迅速に反応できる柔軟な組織が必要とされています。それに対応する形であらわれたのが「ハイブリッド型組織」であります。
この組織構造は、機能毎の専門知識やそれぞれの事業部の自律性を見事に融合させ、企業パフォーマンスを最大化します。さらに、組織の規模、または事業内容に基づきベストなバランスが適宜変化することから、その連続的な調節能力も特性として挙げられます。
ハイブリッド型組織の真骨頂は、柔軟性と効率性の両立にあります。これは、一貫して変化するビジネス環境に対応し、同時に組織としての競争力を保持もしくは高める方法です。
ネットワーク型組織のメリットとは
ネットワーク型組織のメリットをご紹介します。
活発な意見交換が可能
ネットワーク型組織の大きなメリットは、全メンバーが役職や階層にとらわれることなく活動できる、フラット性と言えます。
このフラットな環境において、意見交換は自由に行われることが特徴です。組織内のあらゆるメンバーがオープンに自身の思考やアイデアを共有し、新しい解決策やアイデアを生み出すプロセスが、ここでは推奨されています。
従来の階層型組織では、自己の意見が頂点に届くまでに障壁があることが課題でしたが、ネットワーク型組織ではこれが解消します。
部署や専門分野ごとに隔たりがある場合でも、有意義な議論が広がります。これにより、組織内の情報や課題が共有され、全員が解決の方向に向かって動くことが可能になります。
さらに、このような自由な情報交換は個々のスキル向上や知識拡張に貢献します。自分自身では気づかなかった視点を他者から学ぶことにより、全体の成長という大きな実績を築くことが期待できます。
アイディアの創出につながる
ネットワーク型組織のメリットとして、多様な視点や知識を持つメンバーが自由にアイデアを交換でき、新しい発想が生まれやすい為です。ネットワーク型組織では、階層型の上下関係や固定的な枠組みに縛られず、想像力をフル活用することができます。
さらに、メリットとして大きな影響を持つのがアイディア創出のスピードです。
情報の流れが早く、活発なディスカッションが可能なため、素早く革新的なアイディアにつながります。異なる組織間での協力も可能であり、視野を広げながら新たなアイディアを引き出すことができます。
スピード感のある意思決定が可能
従来の階層型組織では、上位層から下位層へと情報が一方向に伝達される傾向にあり、結論を出すためには相応の時間が必須です。
ところが、ネットワーク型組織においては、情報の流れが水平的に拡散するため、情報共有の時間が大いに縮小されます。
その結果、変化や課題に対してすばやく対応し、それに基づく決定を迅速に下すことが可能になります。特に、新規ビジネスやプロジェクトの開始等、急速な判断が必要とされる時に、ネットワーク型組織の利点は大いに発揮されます。
すべてのメンバーが意見を対等に交換し、意思決定の過程に参加することで、組織全体の責任感や動機付けが高まるというメリットもあります。そのため、情報共有の迅速化と多様な視点の導入、それらを両立するネットワーク型組織は、現代の組織運営において有益な戦略と言えるでしょう。
具体的なメリットとしては、問題に合わせて自由にチームが組成され、権限が委譲される事、または決定者に直接意見が伝えられる事により、更なるスピードを伴った意思決定が可能となります。階層型組織ならば、新たなアイディアが思い付いても、それを計画書にまとめ、各階層の上司に度々提出する必要があり、最終的には役員や意思決定者への解答を得るまで待つ必要があります。しかし、ネットワーク型組織ならば、新アイデアが生まれたとき、個々のメンバーは自己組織化されたチームを構築し、中間の階層を無視して、直接最終意志決定者に意見を求めることができます。
他部署との情報共有がしやすい
従来の組織体制では各部署が独立して機能するため、情報が共有されない場合がありました。しかし、ネットワーク型組織はその壁を突破します。各部署が密接な連携を図り、情報共有のための効率的なシステムを作動させます。
ネットワーク型組織の役立つ一方面は、全体的な視点で問題解決へ向けて取り組めることです。各部署と積極的な情報交換を通じて、幅広い視野から問題を分析し、それぞれの専門知識を活用した多面的な解決策を提示するころが可能になります。
組織内のコミュニケーションが促進されることで、社員のモチベーションを高めます。各々の意見や知識が評価され、新たなアイデアや改善提案が育つ環境が醸成されます。
ネットワーク型組織のデメリットとは
ネットワーク型組織にはメリットがある一方、デメリットもあります。
責任の所在が曖昧
個々の役割や業務範囲が不明瞭であるために、厄介な問題が発生した時、誰もが責任を回避する状況を生んでしまうという問題です。ネットワーク型組織は横方向の連携を重視し、情報を迅速に共有し、理解合意を得ることが可能です。しかし、問題解決の役割が分散しすぎると、誰が最終的な責任を担うかが不明確になることがあります。
多様な意見が出てくることで、広範な見地から課題について考えることが可能になりますが、各メンバーが自分の責任範囲だけを主張すると、課題解決が遅々として進まないことが起こりうるのです。その結果、役割分担やリーダーシップを明確にするだけでなく、責任の在り処をはっきりさせた透明な組織体制が求められるといえるでしょう。
ネットワーク型組織の独特な自由さが良い結果を生むだけでなく、責任の所在が不明瞭という欠点にも対策を打つべきです。そうしなければ、組織全体が機能しきれず、最悪の場合、組織としての機能が停止する危険性も秘めています。
企業組織としてのまとまりがなくなる可能性
ネットワーク型組織という仕組みは、それぞれの部門やメンバーが自由に情報をやり取りする場所を提供し、その柔軟性と効率性から注目されています。しかし、その反面で起こるのが「組織全体のまとまりの消失」というリスクです。
この組織の特性は、部門間やメンバー間で直接的なコミュニケーションが可能であるため、各部門やメンバーが独自の行動を取りやすくなります。その結果、一元的な方向性が生まれにくくなるというデメリットが生じます。
また、この「まとまりがない」という課題は、社員の組織への所属意識や貢献の意識を薄れさせる可能性もあります。役割や責任が明確でないと感じさせる環境は、その社員の行動が組織全体とどう結びつくのか、具体的にイメージしにくい状況を作り出します。
ネットワーク型組織を実現するためのポイントとは
ネットワーク型組織を実現するための重要ポイントをおさえておきましょう。
平等な関係を築く環境整備
ネットワーク型組織は、個々のメンバーが自発的に思考し、行動する風土の醸成が重要となります。特に、平等な関係性の形成とメンバー全員が自主的に行動できる環境の整備がポイントとなります。これは、一律の指示に頼るのではなく、高度な協働を可能にするという、ネットワーク型組織の本質を反映したものです。
また、階層や肩書に固執せず、業務の必要性に応じて流動的に連携を結ぶ柔軟性が求められます。その達成には、自由かつオープンなコミュニケーションができる場の保証と活性化が肝要となります。
一人一人が平等に情報を得て、フラットな意思決定が行える状況の実現も必要です。こうした条件が整うことで、全体の生産性と創造性を高めつつ、各メンバーの才能や能力を最大限に引き出すことが可能になります。
適した人材育成に注力する
新たな価値を創造するための柔軟な視野を持つ人材の育成は重要です。ネットワーク型組織は既存の枠組みにとらわれず、自由な発想が必要となります。そのため、従来の教育や研修を越えた多角的な視点を養うことが求められます。
また、自発的に行動を起こし結果を生み出す人材もネットワーク型組織には必要です。彼らが自己の課題を見つけ、解決に向かう力は、組織全体の発展に不可欠な要素となります。
さらに、多様な視点を活かして共に作り出す共創意識を持つ人材も育成しなければなりません。これにより、コラボレーションや共同作業の推進力を保証できます。
部署の垣根を超えた交流を行う
ビジネスの現場では、各部署が持つ専門知識を全メンバーで共有し、新しい視角やアイデアを引き出すことが不可欠です。そのために、定期的なセミナーや勉強会を開くことで専門知識を共有し、互いの部署の課題を理解することが重要です。
組織全体としてのビジョンや目標を明示し、それぞれの部署のメンバーがどのようにその達成に貢献できるかを理解し合うことも必要不可欠です。これにより、持ち味やスキルが異なるメンバー同士でも助け合い、協力しやすい環境を創出することが出来ます。
社内SNSやチャットツールを介した非公式なコミュニケーションも推奨されます。これにより、カジュアルな意見交換が日常化し、知識や情報が自由に行き来する状況が生まれます。
ネットワーク型組織の事例とは
実際にネットワーク型組織を導入している具体例をご紹介します。
花王
ネットワーク型組織として知られる花王は、適応力と革新を優先するため、組織と職位のフラット化を実践しています。その結果、部署間の障壁がなくなり、広範囲にわたる視界を通じて製品開発が進行しています。さらに、花王の組織変革では情報システムを用いた情報共有や人事交流の活用も重視されています。
社外の組織や専門家との提携も積極的に推進する一方で、花王は異業種との共同事業、ベンチャー企業との提携、そして学術機関との共同研究といったさまざまな形式のパートナーシップを結んでいます。これにより、市場が求める新商品開発を追求し、業績を継続的に伸ばすことが可能になっています。
さらに、商品開発研究組織と基盤技術研究組織が組織横断的に協力して研究を推進するマトリックス運営も行われています。
Googleは、業界の急激な変化に迅速に対応するために、マトリックス組織の手法を採用し、専門スキルを持つチームをプロジェクト別に集結させています。
これにより、多面的な観点から新たなアイデアを集約し、未知の解決策を生成するだけでなく、それぞれの社員が新しいアイデアやプロジェクトを提案する可能性を開きました。
さらに、Googleのオフィス環境もこのネットワーク型組織を具体化しています。開放的なスペースで自由に意見交換をすることで知識を共有し、革新的なアイデアを生み出すプロセスを加速しています。
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社の組織管理は、ネットワーク型組織の成功例として世界的にも評価されています。各部門が独自の専門性を活かし、また同時に他部門との連携を保ちながら業務を遂行しています。これは、いわゆる「ケイレツ」という体系を利用した組織運営が秀でた表れです。ケイレツとは、自動車会社が中心になって形成される縦割りの企業関係を指し、トヨタはこれを最大限に生かしています。
このケイレツ組織の中では、各部門や関連会社はそれぞれの役割を持つとともに、ひとつの大きな戦略の下で協働します。これにより、一台の車を造り上げる際の様々な機能が分散され、それぞれが独自の探索と創造を行うことができます。その結果、柔軟性と多様性を保ちつつ、市場の変動にも迅速に対応することが可能となっています。
まとめ
ネットワーク型組織とは柔軟性と高速な情報伝達を持ち合わせた組織形態で、高度な調整力と迅速な意思決定を可能にします。
メリットとしては情報の自由な流動性や独立性が挙げられ、デメリットには協調性の欠如や管理の困難さがあります。例えばGoogleといった成功企業の進化の背景にはこの形態が存在し、其々の要素を適切に活用すれば大きな成功をもたらします。
よくある質問
ネットワーク型組織の特徴は?
ネットワーク型組織の特徴は、特定のリーダーを指定せずに、チームメンバーが平等なポジションで協力し、アイディアを共有しながら仕事に取り組む組織です。この形態では、意見の自由な表明が容易であり、迅速な意思決定が可能です。加えて、組織内での立場に関係なく業務に積極的に取り組みやすいという特徴もあります。
ネットワーク型組織のメリットは?
ネットワーク型組織の主な利点は以下の通りです。
- 幅広い視点からの意見交換が可能
- 創造的なアイディアの発生を促進
- 迅速な意思決定が可能
- 異なる部署との効果的な情報共有が容易
ピラミッド型組織のデメリットは?
ピラミッド組織のデメリットは、複数の階層を通過することで、明確な意図が伝わりにくくなり、伝達の速さが低下することです。 組織の下層はしばしば「指示待ち」の状態に置かれ、これが現場の判断力の低下に繋がり、近年のビジネス環境では致命的な欠陥と見なされています。
小さい組織のデメリットは?
小規模組織のデメリットは次の通りです。
- 重要なポジションにおける1人の欠員が業績に大きな影響を与える可能性がある。
- 従業員の健康や離職が業務に大きな影響を与えやすい。
ピラミッド型組織とはどういう組織ですか?
ピラミッド型組織は、組織が大規模化するにつれて、管理階層を重層的に設定し、管理職の目が届く部下の人数の限界によって本部、部、課などの管理単位を簡素化した組織の形態です。
アナログデータとデジタルデータの違いは何ですか?
自然界に存在する音や温度、光などの情報は、連続的な値で変化します。このような連続的な値を「アナログ」と呼びます。一方、コンピュータの世界では、情報は離散的な値で表現されます。この離散的な値を「デジタル」と呼びます。アナログデータは連続したスペクトルを持ち、デジタルデータは離散した値のセットで表現されるため、両者の本質的な違いがあります。