デューデリジェンスとは?目的や種類・進め方について解説
デューデリジェンスとは、投資などの経済活動を行う前に行われる対象の詳細な調査・分析のことを指し、事業のリスクを把握し、適切な判断を下すための重要なプロセスとなります。
しかし、デューデリジェンスはその実施方法や視点、細かな種類までがあるため、専門的な知識が必要となる領域でもあります。本記事では、デューデリジェンスの目的、種類、そして進め方についてわかりやすく解説します。
目次
デューデリジェンスとは?
「デューデリジェンス」というビジネス用語は、「買収監査」を意味しています。これは、特に近年のビジネス界において頻繁に述べられる用語となっています。
デューデリジェンスの主な目的は、企業が取引や投資、契約を行う際に、見落としがちなリスクを未然に防ぎ、対象となる企業や物件の情報を入念に調査・分析することです。例えば、M&Aのシーンでは、デューデリジェンスは対象となる企業の財務状況、法的課題や経営状態等を詳細に検査するものとされます。
デューデリジェンスは、見えにくいリスク要素を明らかにする役割を果たします。投資や取引に伴うリスクを早めに認識し、それをコントロール・緩和するためには、デューデリジェンスは欠かせません。もし行われなければ、不確定な要素が後に大きな誤算を引き起こす可能性があります。
デューデリジェンスの目的
デューデリジェンスの目的について、詳しくご紹介します。
リスクの特定と評価
デューデリジェンスの目的の一つは、リスクの識別と評価です。対象企業の財務状況、業績、法的な順守状態などを詳しく調査・分析することで潜在的なリスクや問題が存在するかどうかの特定を行い、それに対する評価を行います。この評価の結果に基づいて企業買収や投資などの大切な意志決定を行います。
デューデリジェンスは、財務リスク(不良債権や過大評価の資産など)、運用リスク(効率が低いプロセス、技術的な問題など)、法的リスク(訴訟、法規制違反など)を含むリスクの識別と評価を目的としています。
これにより、潜在的な問題を事前に理解し、それらを考慮に入れながら事業合併や買収の実行やリスクへの対応など、適切な判断を下すことが可能となります。
企業価値評価
企業価値はその財務情報の現在状況だけではなく、事業戦略や業界の方向性から予測される未来の可能性をも加味して評価されます。デューデリジェンスとは、この分析プロセスを全面的に支える活動であり、経営環境の変動、業績の推移、内部制御に起因する問題といった要素を細かく調査し、企業の真実の価値を見抜いていきます。
さらに言えば、デューデリジェンスは投資前に氷山の一角にも見えていなかった潜在的なリスクを浮かび上がらせ、それを投資判断に反映させるという重要な使命も果たし続けます。早期にリスクを認識し、その影響を最小限に抑えることは投資家にとって、資産損失を避ける上で必要不可欠です。
ビジネスチャンスの発見
デューデリジェンスは新たなビジネスチャンスを発見するための手段としても利用されます。特定の企業や事業のデューデリジェンスを行うことで、その企業の製品や技術が自社のビジネスとどのように統合され、新たな市場機会やシナジーを生み出す可能性があるかを評価することができます。この評価は重要な判断材料となり得ます。
M&Aを検討する際、デューデリジェンスはM&Aの前段階で行われます。このプロセスにより、譲渡企業(売り手)だけでなく買収企業(買い手)も、ビジネスの統合や戦略的な展望に関する洞察を得ることができます。デューデリジェンスを通じて問題点を把握し、契約前に適切な対応を取ることで、契約後のトラブルを回避する助けになります。
デューデリジェンスの種類
デューデリジェンスには様々な種類があります。主なデューデリジェンスについてご紹介します。
セルサイドデューデリジェンス
「セルサイドデューデリジェンス」という語は、「sell side」または売り手側が実施するデューデリジェンスを指します。元々、デューデリジェンスは買い手側が行うものですが、契約締約前に売却側が自社の内部調査を行うことで、潜在的な問題点への早期対応が可能となり、自社の価値を的確に見ることができます。
この行程は、M&A(合併・買収)の過程を円滑に進める上で不可欠です。その作業には、自社の財務状況の再確認、法律遵守の確認、業務プロセスの見直しなどが含まれます。
また、自社の強みや魅力を再確認し、深く理解することで、買収や投資を考えている企業に対するプレゼンテーションをより明確かつ効果的に行うことが可能となります。
事業(ビジネス)デューデリジェンス
ビジネスデューデリジェンスは、目標となる企業のビジネスモデル、事業戦略、市場環境などを細かく調査し、その企業が将来成長し利益を上げる可能性を推測するための工程です。
例えば、他社との提携やM&Aを考える際には、相手企業の財務状況や法律対応が適切かどうかを調査するだけでなく、その企業がいずれの市場でも競争力を保ち生存できるか、という視点からも評価が求められます。ビジネスデューデリジェンスを通じてこれらを確認することにより、より精確なビジネス判断が可能となり、経営上のリスクを避けるための有力な手段となります。
財務(ファイナンシャル)デューデリジェンス
財務デューデリジェンスは、投資先や取引先の企業の財務状況を深く掘り下げる作業のことを示します。これには、会計データの詳細解析、資産と負債の精査、現金流の算定、財務予測の厳密な見直しなどが含まれます。
財務デューデリジェンスの主な目的は二つあります。第一に、投資先企業の評価を正しく測定すること、そして第二に、投資のリスクを減らすことです。
財務デューデリジェンスは企業の過去の財務データをもとに未来の財務の展望を立て、投資の正当な価格を引き出すことができます。緻密な財務データの分析を通じて、企業の財務健全性を検証し、未来のリスクを早期に見つけることもできます。
また、税務や法務など他の種類のデューデリジェンスと同時に行われることもあり、それらの調査結果に基づき調査の範囲を調整することも可能です。
特に中小企業の場合、決算書が現実の状況と大きくずれていることがあるため、財務デューデリジェンスの実施は不可欠です。
法務(リーガル)デューデリジェンス
法務デューデリジェンスとは、企業経営に関連する法的規範や規制を精査し、その違反や危険性を探り出す作業の事をさします。例えば、M&A(合併・買収)のケースでは、対象となる会社の法律順守状況や契約事項、そして訴訟リスク等の法的な隠れた危険を詳細に調査・評価するのです。
この過程では、専門家や弁護士が関わり、その結果を報告書にまとめます。この報告書は、買収において評価や交渉に際して重要な判断要素となり、また大きな問題を事前に防ぐ役割も果たします。
税務デューデリジェンス
税務デューデリジェンスは具体的には、M&A時や資金投資の前に対象企業の税金関連の健全性を把握するための評価作業です。ここでの根本的な目的は、取引企業の税務過去を検証し、税務リスクを明らかにし、理解することです。その検証対象は対象企業の過去の税務申告状況、納税記録、そして税法違反の有無といった項目です。
税務デューデリジェンスを通じて明らかになる情報は、企業が行うM&Aや投資判断を左右する重要な要素となります。もし重大な税務リスクが明らかになった場合、それを背負う覚悟で進むか、それとも税務リスクを軽減または回避するための別のM&Aスキームを考慮するか、という判断が要求されます。
また、文書調査だけでは十分に評価ができないと判断された場合には、対象企業のオーナーへのインタビューにも踏み込むことがあります。
ITデューデリジェンス
ITデューデリジェンスとは、対象となる企業のIT状況や情報システムの深い洞察を目指す作業で、これによりIT関連のリスクを明らかにすると共に、その解決策を探ることが可能になります。詳しく言うと、具体的なITシステムやデータ保護策が適当であるか、仕事のプロセスやシステムの便利さや安定性が保証されているかを一つ一つチェックしていきます。
さらに、企業の買取やM&Aの際の価格設定でも、ITデューデリジェンスによって得られる調査結果は価値評価に大きく影響を与えます。この通り、ITデューデリジェンスを適用することで、企業価値の増加やリスクの縮小を推進できます。そのため、今後もその適用範囲はより広がることが予想されます。
人事デューデリジェンス
人事デューデリジェンスでは、組織の文化、リーダーシップの現状、人材育成理念、報酬体系、そして従業員のエンゲージメントなどを主要な調査項目とします。特に組織を担う役員や重要なポストの人材のセンスと能力は、その企業の未来を左右する重大な要素であるため、厳密な評価が求められます。
企業の価格は、その数値データだけでは収束しません。人材やその運用方法により、その価値は大きく上下します。投資家や企業統合(M&A)を検討する際には、人事デューデリジェンスの結果は避けては通れない要素となります。
調査が不十分だと、待遇や役職、評価方法の違いにより優秀な社員が企業を去り、企業の生産力がダウンする可能性もあります。そうならないためにも、人事デューデリジェンスの結果に基づく人事戦略の見直しや調整が重要となります。
その他のデューデリジェンス
環境デューデリジェンスでは、対象の企業が持つ土地や建物に関連する環境リスクを見ます。土壌や大気、水質の汚染、及び禁止物質の利用がないかどうかを検証していきます。特に海外企業との合併や買収の際には、日本の基準とは異なる可能性のある環境問題もチェックします。
また、不動産デューデリジェンスでは、対象企業が所有する不動産を詳細に調査します。鑑定士の手により、不動産の価値や法令遵守、位置関係、耐震性や劣化の状況、権利関係等についての検討を行います。これにより、購入後のリスクを検証し、投資の価値を評価します。
その他のデューデリジェンスも行われます。プロジェクトや買収を検討する際には、一段と広範な視点から全体像を把握し、リスクを低減させ、長期的な成功を後押しするために重要な役割を果たしています。
デューデリジェンスを実施するタイミング
デューデリジェンスは、具体的にどのタイミングで実行すべきなのでしょうか。
デューデリジェンスは主に契約締結の前やビジネス展開前、さらには投資決定前に行うことが一般的です。これは投資に向けてのビジネスの透過性を見定め、リスクを予測したり回避したりするための必要なステップとなります。
契約が成立する前のデューデリジェンスでは、法的な問題、財務状態、市場の動向といった各種要素を包括的に評価します。これにより、契約成立時のリスクを評価し、交渉の進め方を戦略的に決定することが可能になります。
また、投資判断を行う際にも、対象となる企業が今後持続的な利益を創出できるかどうかその可能性を把握するためにデューデリジェンスが実施されます。
デューデリジェンスは見かけ上は複雑に思われるかもしれませんが、前もってリスクを評価し、適切な投資判断や契約を形成するための重要な過程と言えます。その実施タイミングを適切に理解し、円滑で成功確率の高いビジネスを展開することが求められます。
基本合意契約は、両社がM&Aの内容について大幅に納得し、積極的に手続きを推進する段階といえます。この点から、基本合意契約前に比べてM&Aが白紙に戻るリスクが低減されるため、基本合意契約が締結された後に、デューデリジェンスが進行するというのがふつうのケースです。
デューデリジェンスにかかる期間
デューデリジェンスには数週間から数ヶ月に及ぶ時間が要されます。規模の小さいケースでは約2週間、大規模なケースではそれ以上の時間がかかることもあります。
デューデリジェンスの実行期間が長くなる理由は多岐にわたる調査を行う必要があるからです。それは財務状況の確認、過去のライセンスや取引履歴、経営層やスタッフへのインタビュー、様々な文書の検討といったものを含みます。また、提供する情報の誤りを防ぐ為に、対象企業も慎重な対応が求められます。
デューデリジェンスは手間と費用がかかる作業ですが、それはリスクの早期発見と回避に繋がるため、大いに価値のある行為です。
デューデリジェンスを完了するまでの一般的なスケジュールは以下の通りです。ただし、これは参考であり、対象企業と調査内容により変動します。
- 資料作成・デューデリジェンスの準備:約2週間
- 一次調査・インタビュー:数日から2週間
- 中間調査結果の分析と報告:1週間から2週間
- 最終報告と追加分析:1週間から2週間
デューデリジェンスの手順
デューデリジェンスの手順は主に3つのステップに分けられます。この章では、デューデリジェンスを行う際の手順をご説明します。
方針の決定
M&Aを進める際のデューデリジェンスの手順は、まず買い手企業内でキックオフミーティングを行います。このミーティングでは、買収対象企業の情報を集めた資料が提示され、買収企業の経営陣、M&A担当者、専門家などが参加します。
ミーティングにおいて買収対象企業をM&Aの対象に選定することが決定されたら、次にデューデリジェンスの対象とする項目を具体的に決定します。これには、財務、法務、事業、人事など様々な領域が含まれます。デューデリジェンスの方針決定は、M&Aを成功させる上で重要な段階であり、検討対象の分野や評価ポイントを明確にすることが必要です。
調査の実施
デューデリジェンスを実施する際、まず対象となる項目を決定した後、専門家に依頼して調査を実施します。これにより、買収を検討する企業は相手側企業から開示された資料を確認し、両社の間で生まれるシナジー効果の有無や潜在するリスクなどを検討することが可能です。
また、資料に掲載されていない細かな情報や洞察が必要な場合、専門家は担当者や責任者と直接ヒアリングを行います。このようなアプローチにより、デューデリジェンスはより詳細で包括的な調査を実現し、買収の戦略やリスクヘッジに役立つ情報を獲得することができます。
結果の検討
デューデリジェンスが終了すると、買い手企業は報告書を受け取り、M&Aの契約を締結するかどうかを決定します。
デューデリジェンスの実施によって報告書のボリュームは異なります。報告書は1〜2枚で完結することもあれば、何百枚もの膨大な報告書になることもあります。
報告書の内容に応じて、M&Aの進め方が変更されることや、買収価格が見直されることもあります。デューデリジェンスの結果はM&Aの判断や戦略に大きな影響を与えるため、慎重に検討される必要があります。
デューデリジェンスにはどのくらいの費用が必要?
デューデリジェンスを実施した場合の費用について、内訳や相場についてご紹介します。
デューデリジェンスの費用内訳
デューデリジェンスという企業取引を成功させるための重要な手続き。この調査事項は投資やM&Aの決定をするための大切なステップで、一体いくらの費用が必要なのかという疑問を持っている方も多いことでしょう。
まず、外部専門家たちの報酬が非常に大きな費用となります。法律、会計、税務など様々な専門的な調査を行うため、多くの場合は弁護士や税理士などのプロフェッショナルに依頼します。その報酬は専門性や調査の深さ、期間によって変動します。
また、必要なデータを収集するための調査費用も大きな出費となります。アンケート調査、市場リサーチ、関連資料の調達にかかる費用などが含まれます。
そして、調査期間中にかかる人件費も忘れてはなりません。デューデリジェンスは時間がかかる作業ですから、プロセスの効率化や合理的なスケジュール設定がコスト抑制には必須です。
それでは、どの程度の費用が必要なのでしょうか。デューデリジェンスの種類(事業、財務、法務、税務、人事、IT)により、依頼する専門家のスキルレベルにより、具体的な費用は異なりますが、参考のために以下に示します。
これらの費用は高額に感じられるかもしれません。しかし、これらはリスクを避けるため、適切な経営判断をするための重要な投資であり、それ相応の利益や節約効果をもたらします。
デューデリジェンスの費用相場
デューデリジェンスの費用は対象となる企業の大きさや業界、そして調査の範囲や詳細度によって大いに変動します。小規模な企業であれば、数十万円程度。しかし大企業や業態が複雑な場合では、数千万円をも超えることがあります。さらに、もし海外企業を審査する場合には、通訳費や旅行費などの追加費用も頭に入れておく必要があります。
デューデリジェンスの費用は投資の判断や企業価値の評価に直結するもので、その価値は計り知れません。ですが一方で、これは経営資源の一部でもありますから、浪費を防ぐ意味でも、費用相場の理解は必要です。
費用の予測をつけたら、どう進めるかを決定します。専門家に依頼するのか、自社で行うのか、あるいはそれらを組み合わせるのか、その選択も大切です。成功する投資には、きちんとした情報収集と適切な判断が求められますから、デューデリジェンスの費用相場についてもくわしく知っておくべきです。
以下は、一般的なデューデリジェンスの費用相場です。
中小企業:数十万円から数百万円ほど
大企業や規模の大きなビジネス、または海外企業:数百万円から数億円ほど
デューデリジェンスを行う際の注意点
デューデリジェンスを行う際に注意すべきポイントをご紹介します。
M&Aの規模・内容に応じて適正な範囲で行う
デューデリジェンスは、企業のM&A時に重要な調査・評価作業です。規模や内容により、その範囲や詳細性は変わります。規模に合わせた適正範囲の調査を行うことは、M&Aの成功にとって不可欠です。調査範囲が限定的すぎると、流れ落ちてしまった詳細によりリスクが生じる可能性があります。逆に、無闇に調査範囲を広げると、そもそものM&Aの必要性そのものが疑われることになります。
また、M&Aの急進や調査コスト削減の動きから、本来行うべき詳細調査を省略したり、外部専門家に依頼せず自社内で対応しようとすると、重大なリスクを見逃す危険性が高まります。M&Aの規模と調査費用を考慮し、適切な範囲でのデューデリジェンスの実行が大切であることを、改めて認識すべきだと言えます。
期間内に優先順位をつけて行う
デューデリジェンス(DD)は、M&Aや資本提携、不動産取引などでリスクを回避し、適切な判断を下すために重要なプロセスです。しかし、その手法には戦略性が求められ、調査項目に優先順位を付けて調査することが求められます。
時間とリソースは有限であり、調査する項目全てに均等に配分することは難しいです。そこで、必要な情報を効率よく探し出すためには、期間内で最重要な項目から調査を行うという優先順位の設定が必要となります。これにより、調査のスコープを広げずに、時間とコストを節約できます。
しかしながら、デューデリジェンスを行うためには調査対象になる企業の協力が不可欠です。M&Aを急いで行いたい買収側であっても、譲渡される企業の協力なくしては、デューデリジェンスは実施できないのです。そのため、それぞれの業務に合った最適な戦略の立案と確実な実行、そして譲渡対象企業の協力の形成を目指して進めることが、デューデリジェンスの価値を最大化するための鍵となります。
対象企業は積極的に情報提供を行う
デューデリジェンス、すなわち投資や企業統合、買収の根拠となる企業評価を進める上で気をつけるべき一つのポイントは、「対象企業が積極的に情報を開示する」という行為です。企業が自社の全てを透けるように見せる態度は、評価過程において高く評価されます。
しかしながら、情報の提供が活発であったとしても、その内容が必ずしも全範囲に渡り、客観的なものであるとは言えません。開示される情報が好意的な部分ばかりに偏る場合や、後で深刻な問題を引き起こす可能性のある情報が意図的に抑えられていることも考えられます。
そのため、デューデリジェンスを進める側は、対象企業から与えられた情報に対する慎重な分析と、ある種の疑念を抱きつつの確認をすることが求められます。これにより、企業の価値を真に反映した情報が得られ、正確な投資決定が可能となります。情報の全方位的で客観的な提供が強調されるのは、このような理由からです。
デューデリジェンスを行う際の注意点:情報管理を徹底する
デューデリジェンスを行う中で最も重要な点として、情報の厳密な管理が挙げられます。デューデリジェンスは企業の財務状況や法的な規定との整合性、ビジネスの状況をチェック・確認する極めて重要なプロセスであり、その過程で得られる情報量は多大です。しかもこの情報の一部には機密性の高いものも含まれ、適切に保護・管理する必要があります。
情報の管理は、必要な情報が必要な人にだけアクセス可能な形でシステムを設けるところから始めます。それと並行して情報が漏洩しないようセキュリティの強化が求められます。さらに誰がいつどの情報にアクセスしたかを記録し、情報漏洩が発生した際には、その原因を追跡しやすいようにするための閲覧ログの記録も重要です。
デューデリジェンスの過程で入手した情報をM&Aの目的以外で利用することができないよう、提供した企業側は制約を設けることが一般的です。事情によっては、情報開示の範囲について専門家に助言を求めることも有効な方法といえるでしょう。
まとめ
デューデリジェンスは投資判断に欠かせない調査・分析手法です。その目的はリスク把握と適切な投資判断、種類は財務、法務、商業、技術など様々。進め方は事前準備から情報収集、分析、結論まで一連の流れを理解することが求められます。この結果、より適切な投資判断が可能となります。
よくある質問
Due Diligence Processとは何ですか?
デュー・デリジェンス・プロセスとは、M&Aや株式投資、IPOなどの実行に先立つ、対象企業の適正評価を目的とした調査・考察作業のことを指します。これは英語の「適切な調査」を意味し、一般的には、会計、法務、税務、ビジネスの各観点から詳細な調査が実施されます。
この調査プロセスを通じて、事業の経営状況、財務状態、法的問題、人材状況、市場の動きなど、企業の全体像を把握し、リスクを評価し、価値を正確に評価します。これにより、事後の戦略立案に必要な情報を収集し、不明確なリスクを未然に防ぎ、不要なコストを削減することが可能となります。
また、デュー・デリジェンス・プロセスは、売却する企業にとっては、自身の企業価値を適正に評価し、それを伝える絶好の機会となります。このような一連のプロセスを適切に遂行することで、迅速かつ精密な投資決定を支える明確な視点を得ることができ、高い事業価値や投資リターンを獲得することが期待できます。
デューデリジェンス審査とは何ですか?
デューデリジェンスとは、潜在的な投資対象または取引先企業・事業の価値評価を、收益性やリスク等の視点から綿密に調査する行為を言います。英語で直訳すると、「当然、行われるべき努力」を意味し、適正評価手続き手続きとも表現されます。
具体的には、企業・事業の財務状況や法規制の遵守状況、経営の持続性、そして会社の財務諸表、株主の構成、人事の状況、経営陣のビジョン、企画書、契約書、特許、訴訟リスクなどが審査対象となります。デューデリジェンスの手法は主に3つあり、金融のデューデリジェンス(FDD)、法的なデューデリジェンス(LDD)、営業上のデューデリジェンス(ODD)がそれに該当します。
Due careとDue Diligenceの違いは?
“デューケア”とは、ある行動をとるか選択をする際に必要とされる相当な注意と配慮を指します。これは予防的な行動に重きを置き、将来起こり得る問題を未然に防ぐことを追求するスタンスをとります。たとえば、企業がその業績を上げるためには、従業員それぞれが正しい手続きを忠実に従うことが求められ、それが”デューケア”の役割となります。
一方、”デューデリジェンス”は、企業が新規投資を行ったり合併・買収を進めたりする際に、そのリスクを評価するためや不正行為や法律違反を事前に確認するための過程を指します。これは事後的な対応とも言え、万が一問題が起こった時に責任追及を避けるための保証の役割を果たします。