1. HOME
  2. 会計・ファイナンス
  3. LTV最大化するには?定義や方法について詳しく解説
会計・ファイナンス

LTV最大化するには?定義や方法について詳しく解説

デジタルマーケティングでは、顧客リレーションシップの価値を数値化する手法として「LTV」が頻繁に用いられます。LTVとは、”Life Time Value”の略で、特定の顧客が生涯を通じて品物やサービスに費やす価格の合計を指します。これが大きければ大きいほど、ビジネスの見通しは明るくなるわけです。

では、このLTVを最大化するにはどうすればいいのでしょうか。本記事では、まずLTVの具体的な定義から始め、その最大化に向けた策略と方法を詳しく掘り下げて解説していきます。

LTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)とは

「LTV(Life Time Value)」とは、「顧客生涯価値」と日本語訳され、企業のある一顧客から得られる生涯全期間の収益を示す指標です。

この指標は、単独の商品やサービスの売上だけでなく、その顧客がリピート購入を行ったり、口コミで新規顧客を紹介するなどの業績にも影響を及ぼします。

これにより、顧客の取得コスト(CAC)との均衡を図ることができ、企業の経営が持続可能であるか、または成長可能であるかを評価する基準となります。LTVを上昇させる策としては、顧客の満足度を向上させること、リピート購入の客層を増加させること、高価格の製品やサービスへのアップグレード販売などが挙げられます。

この指標は、顧客単価、粗利率、購買頻度、取引期間、および顧客の獲得や保持コストなどを考慮して算出されます。

LTVが注目されるようになった背景とは

LTVはなぜ重要な指標とされ、注目を集めるようになったのか、その背景を解説します。

新規顧客の獲得が困難

新規顧客獲得が企業成長の一方の軸である時代は、徐々に終焉に向かっています。情報の溢れた現代社会において、消費者は幾多の選択肢の中から自らの満足を追求するため、会社間の競争は遂に前例のない規模へと膨れ上がりました。さらに新型コロナウイルスの影響により、消費者の生活スタイルや購買行動にも大きな変化が生じ、新規顧客を獲得すること自体が困難になる傾向にあります。

そんな中、企業に求められるのは真のリピーターを獲得し、その顧客一人一人から最大限の利益を得ること、すなわちLTV(顧客生涯価値)を重視するべきだという考え方が浮上してきました。これは顧客を獲得するだけではなく、その後も高い満足度を保ちつつ定期的なリピートや追加購入を促すこと、結果的には安定した経営と売上増加に繋がるとされています。

CRMとの親和性が高い

CRMとLTVが連携することで、顧客一人一人の購買行動や商品に対する属性を分析し、それらのデータに基づいて最適な接触方法を見つけ出すことが可能となります。そして、この接触方法の最適化によって顧客の満足度を高め、取引を継続してもらう可能性を最大化することができます。

また、ネットビジネスの浸透により、各顧客の詳細なデータを容易に収集・分析できるようになったことも、LTV意識の高まりに貢献しています。この情報を元にした個別顧客との長期的関係構築がより一層重要視されるようになりました。

CRMの更なる活用とデータの有効利用を推進することで、LTVへの注目度が高まり、企業が顧客の価値を理解し、顧客満足度を引き上げ、長期的なビジネス関連性を築くという経営戦略が形成されているのです。

One to Oneマーケティングへのシフト

かつては一回の取引や成約回数を重要視するマスマーケティングが当たり前だったのですが、個々の顧客データを深く掘り下げ、それぞれにベストマッチした提案やサービスを提供するOne to Oneマーケティングが主流になりつつあります。

LTVの有用性が実感されるようになってきた現在では、単発の取引に終始するのではなく、顧客との長期間にわたる関係性を大切にする企業が増えてきています。これは顧客満足度を高めリピート購入を促し、口コミによる新たな顧客獲得につなげ、その結果として一人の顧客が生み出す利益を最大限に引き出すための戦略です。

サブスクリプションモデルの人気

サブスクリプションモデルとは、一定間隔で定額料金を支払うことで商品やサービスを継続的に享受するビジネスモデルで、今やソフトウェアから音楽、映画、日用品まで幅広く適用され、消費者からは使いやすさと新たな商品やサービスの発見機会の増加などの面で好評を得ています。

また、サブスクリプションモデルは2019年時点で約1.1兆円の市場規模を持ち、そして2023年には約26%増と予測される1.4兆円へと成長するとされています。そのため、顧客ロイヤルティーを測るための指標として、ますますLTVは重要となることが予測されます。

LTVの計算方法とは

LTV(顧客生涯価値)とは、特定の期間内に1人の顧客から得られる売上や利益を指します。LTVは以下の式で計算できます。

LTV = ①購買単価 × ②購買頻度 × ③継続購買期間

LTVを最大化する方法とは

LTVを最大化する方法をご紹介します。

購買単価を上げる

LTV(Lifetime Value)と言えば、ある企業が一人の顧客から得られる利益の合計を指すものであり、企業の永続的な成長を果たすためには、この数値を増大させることが必要不可欠です。そのアプローチの一つとして、顧客ごとの購入金額、すなわち購買単価を高めることが考えられます。

購買単価とは、客一人が一度の購入で支払う金額のことであり、これは物理的な店舗ではレシートに記載された金額、ECサイトではカートに入れられた商品の合計金額、サブスクリプション型のサービスでは毎月の費用として表現されます。

商品単価アップ

商品単価を高めることがビジネス利益を増やす効果的な手段である一方、単に価格を増やす方法では顧客の反感を感じ、反作用につながる可能性があります。価格を増加させるためには、価格上昇の戦略が重要な要素となります。

商品そのものの価値を再考し、価格設定が適切であるか再評価することが欠かせません。価値を高めるためのマーケティング戦略も検討してみてください。顧客が安心して価格を受け入れるためには、商品の品質、独自性、サービスなどが良好であると認識していただくことが必要です。

商品パッケージや販売方法の刷新、高級感を出す行為も有效と言えます。豪華なパッケージや特別商品として提供することで、顧客はその価格以上の価値感を感じられることでしょう。

アフターサービスや詳しい商品情報の提供など、十分なサービスを提供することで、顧客満足度を向上させ、商品の価値を高めることが可能です。

価格上昇のために、価格を単純に高めるだけではなく、商品の価値を高めることが大切です。その価格を納得させる商品を提供しましょう。専門的な施策としては、

・既存商品をアップグレードして価格を上げる

・プレミアム版などの高位商品の販売

・パッケージサイズを大きくする

・高品質素材の商品を販売

・ブランド力のある商品を販売

などが挙げられます。

購入点数を増やす

購買単価を上げるための戦略は、顧客が一度の購入で手に入れる商品の数を増やすという施策です。例えば顧客が100円の商品を1点だけでなく、2点、3点、あるいは10点とまとめて購入することを促すというものです。

手段としては、まず購入の障壁を減らすことが考えられます。つまり、購入に関する手間やストレスを軽減し、貢献して価値と満足度を高めることで、一度の購入による利益を増やすことが可能になります。

アプローチの代表的な手法として、商品の品質を高めることや関連商品の推奨、セット商品の販売、割引クーポンの提供などがあります。

商品の相性を理解してもらったり、複数の商品を一度の購入で入手する利点を強調したりすることも有益ではないでしょうか。加えて、セールやイベント時には特別なバンドル商品の提供も考えられます。

購入アイテム数を増やす

一般的に多くの人々は、「もったいない」という感情を抱きやすいものです。例えば、特定の金額以上の購入で送料が無料になるような設定は、送料の節約目的で、更なる商品をカートに加えることを促します。これにより、もともと一点のみの購入を予定していた顧客が、結局は複数の商品を購入することになり、結果的に購買単価が高まります。

加えて、関連商品をオススメしたり、セット販売を行ったりすることも有効な施策です。商品ごとの価格を適性に保ちつつ、購入する商品数を増加させることで、購買単価を上昇させられます。商品の特徴をうまくアピールし、お客様の要望を理解することで、一度の購入で複数の商品を手にしてもらう機会が増えます。

購買頻度を上げる

LTVを最大化する工夫の一つは、品質を確保した商品やサービスを提供し、顧客の満足度を高めることです。満足度が高ければ、再購入の対象として自社の商品やサービスが選ばれる可能性が上がります。また、リピート購入を奨励するプロモーションや、購入に役立つ情報を提供することも効果的です。これらは顧客が再び訪れるきっかけを作り、購入頻度を上げる手段となります。

特に優良な顧客に向けたリワードプログラムを導入することも効果的です。それにより、特別な特典や割引を提供し、長期間にわたる忠誠心を引き出すことで、LTVを更に水準上げることが可能になります。

取引期間を延ばす

LTVを最大化する手法の一つとして、取引期間の延長に焦点を当てることが挙げられます。これは、単に顧客からの収益を高めるだけでなく、企業の繁栄にも繋がる長期的な顧客関係を確立することを可能にします。

取引期間を延ばすためには、顧客ロイヤリティを鍛えることが要となります。これらは高品質な商品やサービスの提供、信頼関係の築き上げ、優れたアフターサービス等とともに、リピート購入を促進するための活性化策や報酬プログラムの導入が可能です。

取引期間の延長が顧客との長期的な関係を醸成し、1人当たりの顧客価値を向上させます。このような高価値顧客は、口コミによる新顧客獲得や貢献可能なフィードバックの提供を通じて、事業に多角的な利益をもたらします。

顧客の獲得・維持コストを下げる

LTVを増大させるためには、顧客獲得費用の低減が重要となります。例えばキャッチーなLPは営業担当者の代役になり得るため、顧客獲得コストを下げる手段になります。

そして、既存の顧客との関係維持のための費用を抑える戦略も検討しましょう。商品の使い方に関する基本的な質問とその解答をウェブサイトに掲示することで、顧客自身が問題を解決できる状況を創出するのは一つの方法です。

LTV最大化に役立つツールとは

LTV最大化に役立つツールをいくつかご紹介します。

行動分析ツール

行動分析ツールを使えば、顧客のデジタル行動の細部まで詳しく把握し、顧客の購買行動や習慣を分析することができます。その結果、一人一人の顧客の興味や好みを深く知ることができ、それに沿ったマーケティング戦略を立案することができます。具体的には、特定の商品への関心度や購買までの行動パターンを理解し、それに基づいてタイムリーにパーソナライズされた情報を提供することが可能となります。

さらに、ユーザー行動分析ツールのもう一つの利点は、様々なデータから仮説を立てて検証する作業を簡単に行えることです。様々なデータに基づく仮説を作り、それが正しいかどうかをリアルタイムで確認することができます。これにより、顧客の反応や行動を見つつ最適な施策を見つけ出すことが可能となります。

カスタマーエンゲージメントプラットフォーム

カスタマーエンゲージメントプラットフォームは、SNSやEメール等、消費者との接触を一律に調整するもので、消費者の反応や行動履歴を踏まえて、彼らが最も関心を寄せる情報を適したタイミングで提供できるようにします。

これにより、単純にサービスを利用するだけでなく、「自身の興味や需要にフィットした情報が届く」という体験ができるようになり、サービスへの関与度がより高まります。結果として、顧客はサービスを長期的に利用し続け、LTVを最大化することが実現します。

CRM

CRM(Customer Relationship Management)は、個々の顧客情報を集約することで、顧客とビジネスの結びつきを強化・維持するという役割を果たしています。

CRMを利用すれば、顧客の年齢や性別といったデモグラフィック情報、購入・接触の履歴、営業活動の記録、さらには彼らの好みや行動パターンまで、様々な情報を集めて一元化することが可能となります。これにより、顧客の消費嗜好やニーズを把握し、それぞれにフィットするマーケティングや営業戦略を立案することが可能になります。

CRMの利点は他にもあります。個々のマーケティング活動の結果分析、ROI(投資対効果)の測定、そして顧客満足度の向上に効果があります。これらは顧客との長期的な良好な関係を構築し、一人ひとりのLTVを引き上げるための鍵となります。

まとめ

LTVを最大化するためには、顧客の満足度を高め、長期的なリピート購入を促すことが重要です。そのために、高品質な商品やサービスの提供、独自性の追求、パーソナライズされたコミュニケーション、そして効果的なロイヤルティープログラムの導入などが求められます。これらが兼ね備えられて初めて、顧客の生涯価値は増大するでしょう。

よくある質問

LTVとは顧客生涯価値のことですか?

LTV(Life Time Value)は、顧客生涯価値を意味します。顧客がある企業との取引を開始してから離れるまでの期間、つまり「顧客ライフサイクル」の間にその企業にもたらした利益の累計です。

LTVが高いとどういうこと?

LTVが高いことは、顧客が長期間にわたり企業の製品を継続的に選択していることを意味します。顧客との強固な関係があり、その顧客からの継続的な支持があることを示します。ロイヤルティの高い顧客は通常、より多くの購入を行う傾向があり、その結果、LTVが高くなることがあります。

LTVの平均は?

LTV(顧客生涯価値)の平均は、顧客が一定期間内に企業から得た平均的な利益を表します。この値は、通常、購入単価、購入回数、継続期間を基に算出されます。

具体的には、LTV = 平均購入単価 × 平均購入回数 × 平均継続年数と計算されます。この式では、1年間あたりの平均購入単価、購入回数、そして顧客が企業と取引し続ける平均期間が含まれます。

LTVとはなぜ重要?

LTVの重要性は、自社サービスの利益構造を把握し、優良顧客の動向分析、顧客獲得コストや維持コストの目標数値設定など多岐にわたります。この指標は経営判断の指標として機能し、企業活動やマーケティング戦略の適切な判断材料を提供するため、極めて重要です。

LTVの目的は何ですか?

LTVの目的は、顧客の企業との取引から得られる総利益を見積もることです。この指標を把握することで、マーケティングや広告にどれだけの予算を割くべきかを評価し、最適な顧客獲得コストを見積もることが可能となります。

LTVの具体例は?

たとえば、平均顧客単価が20万円で、収益率が50%、購買頻度が1回/月(年間12回)、継続期間が5年の場合、LTVは以下のように計算されます:LTV=20万円 × 0.5 × 12 × 5 = 600万円。

ただし、この計算には顧客獲得や維持にかかるコストが含まれていません。これを考慮すると、LTVの算出は以下のように修正されます。

LTVのメリットとデメリットは?

メリットとして、LTVは売上原価を考慮することで、実際の利益を評価し、費用対効果を把握できる点があります。この手法を用いることで、収益性の高い顧客を特定しやすくなります。一方、デメリットとしては、顧客継続期間が考慮されていないため、短期間で離脱する顧客や高い離脱率の場合、LTVが過大評価される可能性がある点が挙げられます。